「また文句か…」1日中クレームをくらいまくった男が最後に聞いた「意外な一言」
過去のいい体験を呼び覚まそう
ではここで、過去に体験したとてもいいことや、うれしかったこと、楽しかったことを思い出してほしい。そのときに感じたことや、体験したことを呼び覚まそう。 そして、しばらくその記憶に浸ってほしい。そのときと同じ場所で、まったく同じ体験をしているかのように、その状況を頭のなかで再現するのだ。最高の気分をもう一度味わってみよう。 こうすると、頭のなかのシミュレーターがフルパワーで稼働しはじめる。内なる世界で、その幸せな瞬間に戻ったような感覚になるはずだ。 自分のことをポジティブにとらえるときも、このシミュレーターが稼働する。そして、そのポジティブなイメージが、体内のシステムの細胞レベルにまで送られる。 反対に、自分をネガティブにとらえると、頭のなかに辛辣な批評家の居場所ができあがる。するとシミュレーターが全身にシグナルを送り、内なる世界ではそれが真実になる。 この内なる批評家について、あなたは知っていただろうか? じつは、この批評家があなたのあら探しをしているとき、脳のなかでは、あなたがいじめられているのと同じ現象が起きている。そうならないように、あなたは自分のいちばんの親友にならなければいけない。
機嫌が悪くて「盛大に勘違い」
親友なら、内なる声にどう言わせたいだろうか? 口うるさい批評家を、内なるアドバイザーに変えてしまおう。このアドバイザーは、頭のなかのおしゃべりをポジティブなものにしてくれる。 ただし、すぐには変わらない。練習が必要だ。それでも忍耐強く、少しずつ練習を積めば、必ず結果はついてくる。頭のなかのシミュレーターをしっかり意識して、あなたを応援してくれるサポーターとして活用しよう。 もちろん、言うは易く、行うは難しだ。それでも、とにかく練習を続け、口うるさい批評家は追い出し、内なるアドバイザーに永住してもらおう。ミラーニューロンの働きがわかれば、頭のなかのシミュレーターを意識しようという気持ちになるはずだ。 じつは、内なる対話も、私たちが他者とどう関わるかに影響している。だから、自分のためにも、相手のためにも、このシミュレーターをしっかりと意識してほしい。それがよくわかる例として、以前聞いた話を紹介しよう。 ある男が通りを歩いていた。その男は疲れていて、機嫌も悪かった。仕事でさんざんな目に遭っていたのだ。 男は、たくさんの顧客からクレームをつけられていた。彼には、それがひどく理不尽に思えた。歩いているあいだも、顧客の言葉が頭から離れず、いらいらした。考えれば考えるほど腹が立った。 ふと前を見ると、顧客の1人がいた。「ちぇっ、また文句を言われるのか」。怒りがさらに増した。その顧客が近づいてきて、目の前に立ちはだかった。 堪忍袋の緒が切れ、男はふてくされて言った。「はいはい、あんたは何がご不満で?」 そして最悪の事態を待ちかまえた。 すると顧客は、驚いた顔で男を見返して、口ごもりながら答えた。「私は、ただ……あなたにお礼が言いたくて……とてもいい仕事をしてくださったので」