「また文句か…」1日中クレームをくらいまくった男が最後に聞いた「意外な一言」
人によって相手によって伝染力は変わる
たとえば、あなたが私と会っているとしよう。そのとき、私が持っている鏡には、あなたの姿が映っている。そして、あなたの感情やふるまいが、その鏡をとおして私の脳に伝わる。それが、私の体内のあらゆるシステムに伝わる。 それを考えれば、ミラーニューロンは人間の共感の発生源といえるだろう。あなたの気持ちを、私も感じる。つまり、互いに心が通い合っている。 私たちの脳は、他者と直感的につながるのだ。互いの脳がくっついているようなものだ。自分の脳のなかにいるのは自分だけではない。 また、この鏡は人によって大きさが少しずつ違う。大きい鏡を持っていたら相手に伝染しやすいし、小さい鏡なら伝染しにくい。また、伝染力は、相手との関係によっても変わる。 ミラーニューロンは、耳から入った情報にも反応する。また、何かを思い浮かべただけでも反応する。 たとえば、目の前にレモンが1切れあるとしよう。それをかじってレモンの酸味が口いっぱいに広がったところを想像してほしい。口のなかに唾液があふれてきたのではないだろうか? 私たちが見たり聞いたり、また考えたりするだけでも、頭のなかで必ずシミュレーションが行われる。 ある研究で、被験者は、自分に関するネガティブなこと、たとえば「私は不細工だ」などの言葉を50回書くように指示された。その後、被験者はどんな気分になったか? 決して機嫌がいいとはいえなかった。 言葉にしたり、思い浮かべたり、観察したりすることはすべて、まるで現実の出来事を再現するように、頭のなかでシミュレートされる。脳は、現実と非現実の区別をしない。どんな思考も生真面目にとらえて、頭のなかのシミュレーターに放り込む。 その結果、シグナルが体内のシステムに送られ、同じふるまいがうながされる。 この仕組みは、パイロットが操縦訓練をするフライトシミュレーターとよく似ている。フライトシミュレーターは、実際に航空機を操縦するのと同じ感覚で訓練できる装置だ。そのため、地上にいながらにして空を飛ぶ感覚を味わい、急降下するときの目がくらむような感覚まで体験できる。 ミラーニューロンは、このようなシミュレーターを頭のなかで作動させる。