なぜ横浜DeNA山崎康晃はプロ6年目にして牽制球を解禁したのか…阪神サンズ劇的逆転3ランの裏に壮絶心理戦
山崎が牽制をしない理由は、打者に100%集中したいというポリシーからだ。牽制をしなくとも、走者を目線で抑える牽制、クイックなど、走者を一塁に釘付けするためのテクニックを駆使して、これまで修羅場を潜り抜けてきた。5年連続で25セーブ以上をマークし2018年、2019年と2年連続のセーブ王を獲得している。 だが、牽制を解禁した山崎は、大山に四球。そして、サンズに、さほど落差のないツーシームを弾丸ライナーで無人のレフトスタンド中段に運ばれてしまった。失投だった。 「サンキュー、サンキュー。気分はグッドだ。早い回にヒットを打ちたかったんだが、打てなかった。最後はホームランを打てて本当に良かった。山崎は球界を代表する守護神? チームの勝利に貢献できたことが一番だよ」 起死回生の逆転3ラン。練習試合の内容から開幕を前に2軍に落とされていた推定年俸1億2000万円の虎の新外国人は興奮していた。 体の開きが早いため、どうしてもアウトコースへ逃げていく変化球に対応できない。そこを突かれて、この試合、ここまで三振、右飛、三振、二ゴロと、まったく打てる気配はなかった。サンズにとって、外へ逃げずに真ん中へ入ってきた、このツーシームは唯一といっていい“ツボ”だったのである。昨年、韓国で28本塁打を放ち、113打点で打点王を獲得したパワーと勝負強さはダテではなかった。 9回裏。横浜DeNAは阪神の守護神、藤川球児を二死満塁まで追い詰めたが、もうゲームをひっくり返すことはできなかった。 試合後、ラミレス監督は、「最初から最後まで息をのむようないいゲームだった。(3連敗中の)タイガースが絶対に負けないという強い気持ちで向かってくるのはわかっていた。簡単な試合にはならないと思っていた。タイガースは最後まであきらめることなく勝利をつかんだ」と、阪神を称え、「こんなゲームもある」と結んだ。 24日の中日戦でも9回に満塁のピンチを迎えるなど、ピりっとしない山崎に関して「状態は悪くない。ただ横浜スタジアムではよくないところがあり、過去に阪神戦でも、こういう打たれ方をすることがあった」と評した。 一方の矢野監督は、植田の盗塁を「超スペシャル」「スポーツ紙の一面でもいいぐらいの走塁」と絶賛した。横浜DeNAベンチを慌てさせ、山崎に一度も投げたことのない牽制をさせ、サンズへの失投を引き出したのは、確かに植田の足というプレッシャーだった。