未成熟な社会への警笛-藤井浩人美濃加茂市長×中谷一馬衆院議員
2014年、前年に岐阜県美濃加茂市長選挙で当選した藤井浩人市長が、受託収賄などの罪で逮捕・起訴された事件から10年。藤井浩人美濃加茂市長と中谷一馬衆院議員の対談の様子をご寄稿いただきました。 【中谷】 藤井市長とは、共通の知り合いも多く、昔から一方的には知っていたのですが、付き合いとしてはどれくらいになりますかね? 【藤井】 お会いしてから6、7年経つかと。 【中谷】 市長になられたのは、28歳のときでしたよね。当時は、すげー熱い人だなぁ、と思って見ていて、同世代ながら刺激をもらっていました。 【藤井】 いや、たぶん政治家になった経緯でいえば、中谷さんほど苛烈な人はいないと思います。 【中谷】 とんでもない。私の友人たちがむちゃくちゃ藤井さんのことを褒めていたんですよ。「ものすごく爽やかで、とてもいい政治家なんだ」って。
無実の罪を着せられた数多の人々
【中谷】 そんな共通の友人も多い我々ですが、藤井さんと私は、ある共通の体験をしています。それは冤罪の当事者として苦しんだということ。藤井さんは、市長就任の1年後、身に覚えのない収賄などの罪で逮捕・起訴されました(※美濃加茂市長汚職事件:2013年に初当選した岐阜県美濃加茂市の藤井浩人市長が翌年、受託収賄などの罪で逮捕・起訴された事件)。証拠は贈賄側の証言だけで、藤井さんは一貫して潔白を主張してこられましたが、逮捕から取り調べ、裁判に至るまで、理不尽な仕打ちを受け続け、また、世間からは犯罪者として見られてきました。まず逮捕されたときの率直な気持ちをお聞かせください。 【藤井】 私が政治家を志した経緯を話すと長くなってしまうのですが、政治の世界に足を踏み入れた以上は社会にはさまざまな闇があって、闘うべき相手がいるだろう、そんな社会を良くしたいと思っていました。そんな正義感は、父が警察官だったということが強く影響していると思っています。ですから、ある意味、警察はもっとも信頼していた組織だったのですが、まさかそこから疑われ、無実の罪を着せられるとは思わなかったですね。それがまずショックでした。中谷さんは、最初、どんな感じだったんですか? 【中谷】 私は、2022年9月、とある議員の方から「中谷一馬衆議院議員からハラスメントを受けた」と言われて、本当に驚きました。その議員の方は記者会見を開き、「出産直前に選挙に向けた活動を何度も断ったのに、ビラまきや街頭活動などの活動を再三求められた」旨を訴えたのですが、」と訴えたのですが、私自身はそんなことを一切言っていない上に、むしろゆっくりと静養していただきたいと何度もお伝えし、メッセージもお送りしていましたので、まさに青天の霹靂でした。 私は、妻とともに5歳と2歳の娘を育てていますが、その当時は下の子が産まれた時期で、出産前後は育休を取得していました。党の青年局長を務めていたこともあり、産休育休の取得を率先して推進していましたので、私自身も妻と共に出産、育児に奮闘していました。マタハラの濡れ衣を着せられたときには驚愕し、唖然としました。私自身は党内でも事務所内でも、ハラスメント対策についての研修を行い、率先してハラスメント撲滅に尽力してきた自負もありました。そうした状況の中で、まったく身に覚えもないことでしたから、まさかそんなことを自分が言われるとは夢にも思わなかったですね。 【藤井】 同様の体験をされた方はたくさんいます。私のところには、冤罪当事者の方々からたくさんのメッセージが寄せられていて、その中には痴漢や交通事故で罪を着せられた方、離婚訴訟で妻からDVの作り話の告発を受けたという話をされる方などがいます。この国は、証言のみで貶められるリスクを孕んだ未熟な社会であることをもっと広く知ってもらいたいですね。