未成熟な社会への警笛-藤井浩人美濃加茂市長×中谷一馬衆院議員
「悪魔の証明」と「人質司法」
【中谷】 普通、やっていないことの証明は「悪魔の証明」と言われるようにとても難しいのですが、私の場合はそれができ、先方の主張が全然違うという点も立証できました。幸いだったのは、私が「ハラスメントをした」と指摘された時期はコロナ禍だったこともあり、会議や打ち合わせはZoomなどが多く、しっかりと内容が録画されていて、普段のやりとりもメールが多かったのでほとんど証拠が残っており、私の主張をしっかりと証明することができました。本件については、党のハラスメント対策委員会が弁護士などで構成される第三者機関に調査を依頼し、約8ヶ月間の調査をして頂きましたが、結果として2023年1月に、「ハラスメントはなかった」という結論を示していただき、嫌疑を晴らすことができました。 【藤井】 私の事件の争点は「賄賂を受け取ったか否か」ということだけでしたから、贈賄側が「金を渡した」と証言した店の防犯カメラの映像でも残っていればよかったのですが、残念ながらそうしたものはありませんでした。 【中谷】 たぶん身に覚えのない嫌疑をかけられた方の多くは、相手との会話なんて録音も録画もしてないでしょう。だからいったん告発や証言をされてしまうと、簡単にそれを覆せない。 【藤井】 私の場合は、警察・検察がもう逮捕してしまった以上、「金の受け渡しは間違いなくあった」ことにするしかなかったので、無実の証明は困難でした。事実の追求ではなく、ストーリーをでっちあげるとはこういうことかと目の当たりにしました。裁判で検察が出してくる証拠は、検察の主張にとって都合のいいものばかり。警察の捜査資料や検察が持つ情報の中には、こちらに有利な証拠があるかもしれないけれど、それは出してくるわけがありません。本当に事実を追求することを目的にするのであれば、最初からすべての操作資料やデータを開示した上で、被疑者・被告人の有罪立証だけじゃなく、無罪のための立証もできるようにするべきでしょう。 【中谷】 諸外国では、そうした証拠開示や手続きについてしっかりと法整備がされている印象があります。 【藤井】 先進国の中で日本はその点において最低レベルだと聞いています。国連からは日本の刑事司法制度に関して、国際的な基準との整合性について懸念と改革を求める勧告を受けています。 【中谷】 それだけでなく、日本では警察に一度逮捕されたら、犯行を否認する限り、釈放も保釈もされないという「人質司法」の問題があります。最近、私も国会で総理大臣に質問主意書を提出させていただきましたが、この問題は国連からも指摘されていますので、解消に向けた司法制度改革が必要だと考えています。 【藤井】 痴漢で捕まると、警察が被疑者に「いま認めれば、本人との示談もできるし、すぐに帰れる。無罪を訴えたいなら裁判でやればいい」と説得して調書に印鑑を押させるケースがよくあると聞きます。しかし、その調書が裁判の決定的な証拠となり、無実であっても有罪判決が下されることも少なくない。私も警察からまったく同じことを言われました。人質司法という理不尽な制度は、冤罪を生む大きな原因の一つといえます。