チャラそうと言われても――人口ゼロになった町に移住し復興の種をまく青年に迫る #知り続ける
大川さん同様、都内から小高に移住し復興に携わる神瑛一郎さん(一般社団法人Horse Value代表)も、当初は大川さんに対し「チャラそう」なイメージがあったという。 「SNS上はイケイケで、ただ勢いのある若者って感じに見えるんですけど、結構慎重なところもあるんです。しっかり勉強しているし、実際の彼に会うと、すごくちゃんとしている印象を抱くと思います。特に、SNSから彼のことを知った人は、実際の彼の印象とのそのギャップに驚くでしょうし、それこそが彼の魅力だと思います」 移住・復興・起業――大川さんの行動力の裏側には、もう一つ野望がある。彼が小学校時代から憧れるアーティストの「ONE OK ROCKのTakaと友達になること」だ。 「Takaと友達になるためには何をしたらいいかと考えた時、自分自身がTakaと同じ土俵にのるくらいの大きな男にならないといけないって思ったんです。福島にフォーカスして活動していける人間、自分より下の世代に背中で大きく見せられるような人間になることが、Takaの友達になる第一歩だと考えました。ビッグマウスだということは自覚していますが、こうして取材を受ける機会もいただけましたし、名乗ったことによる変化が起きると信じています」(大川さん) こうした大川さんの活動を、父・昌義さんはどう見ているのか。 「地元に根を下ろしながら働く姿を見て、とても誇らしく思います。息子は、私が思いつかないアイデアを持っている。それが実際の形になるかどうかは分からないけれど、私もお手伝いしたいと思っています。福島の為にいろんなことをやりたいという本人の思いは強く、そこを貫いてもらって、本当に福島を変える男になってもらえたらと応援しています」
いずれは父を超えたい 目指すのは福島創生と地方創生の2つの課題解決
今後、福島を変革するために求められるものは何なのか――。大川さんは、「地方創生と福島創生の2つの軸」を掲げる。 「1つは、人が集まる仕組みを作ること。人口減少など、いま日本全国の地方が抱える課題を解決できるような新たな仕組みを作りたいと考えています。そのためにまずは、小高という小さな地域から、ロールモデルになるような実績を残したい。震災前の人口に近づけられる、たくさんの人が集まる町を作っていきたいと思っています。 2つ目は、地方の町に仕事を作ること。いまは若い人たちが地元を離れる傾向がありますが、いまいる地元の環境の面白さに気づけていない面も影響している気がしています。福島にはたくさん魅力があるし、地元愛がある大人がたくさんいます。にもかかわらず、その人たちと関わる機会もきっかけも少ない。そこを同世代に発信し、福島の魅力に気づいてもらう機会を作っていくことで、地元に残って働こうという選択肢が出てくるかもしれません。福島に人が住み、集まることで福島がどんどん変わっていくんじゃないかと思っています」(大川さん) ----------------------------------------- 大川翔さん(23) 福島県郡山市出身。大学進学を機に上京し、学生時代から福島人が営む集会所(SFF)の運営や福島県産食材を広めるためのクラウドファンディング活動に携わる。現在は株式会社Huber.に勤める傍ら、『福島を変革する男』として福島の魅力をPRする。