新宿・歌舞伎町の“たちんぼ”なぜ減らず?元・当事者女性が語るやめられた理由「支援より寄り添って」
■増えるたちんぼに“推し文化”が影響?
警視庁も対策はしているが、なぜたちんぼの数は減らないのか。仙頭氏は、いくつか理由がある上で“推し文化”をあげた。「推し文化みたいものが、すごく関わっていると思っている。人にお金を使うので、お金を作らなきゃいけないと女の子たちはすごく言う。ホストクラブやメンズコンカフェだとか、メンチカ(メンズ地下アイドル)でよく使っている」。またホストクラブに関しては売り掛けが禁止になったが「あれは確かに少しは効果があるのかもしれないが、僕はあまり感じていない。歌舞伎町に300いくつのホストクラブがあるが、そのうちの半分ぐらいしか売り掛けはやめていないし、残りはやっている。その半分も結局売り掛けという制度ではない形でツケ払いの飲みをやらせている」と述べた。 またコロナ禍によって、本来なら性風俗店で働いていた女性たちが、やむを得ずたちんぼ化してもいるという。「そもそもここに立っている女の子は、少し前までは風俗店で働いていたが働けなくなった。聞いてみると、コロナによって普通の女の子たちがいっぱい入店してきたから、あぶれるような形で働けなくなった話を聞く。」と、押し出されるように、たちんぼになるケースもあるとした。
■元たちんぼ女性が辞められた理由「支援じゃなく寄り添って」
実際にたちんぼをしていた経験のある、ゆきさんはどんな気持ちであの場所に立っていたのか。多くの女性がスマホなどを見ながら暗がりで立ったまま客を待ち、男性たちが近寄ってきては次々に声をかける。異様な雰囲気が漂う場所に、ゆきさんも恐怖はあった。ただ「あそこに最初立っているのはすごく怖かったけど、どんどん麻痺していって、当たり前になってしまった」という。自分の横にも同じように多くの女性が立っていたが「私は他の女の子たちは絡まなかったけど、いつもいるおぢ(男性)に声をかけられたりはあった」。体を売って手にした金はどうしたのか。「ほとんど飲み代に溶かしてしまった。ホストに行ったりして、300万円とか溶かしてしまった」と、仙頭氏があげたパターンの例と同じだ。 未成年だった15歳から21歳まで「軽いお小遣い稼ぎのノリ」でたちんぼをしていたゆきさんだが、5児のシングルマザーで虐待やいじめの被害者の支援をしてきた山田よう子さんと出会い、人生の転機を迎える。「ママ」と呼ぶ山田さんに寄り添ってもらったことで、心に変化が起きた。「ママとお話をして、ママも昔はいろいろやっていたんだけど今は立派に5人のお子さんのお母さんをやっているということで、私も立ち直れるかなと思った」。他の大人たちからはたちんぼを辞めろと言われ続けたが「ママは無理やり、辞めさせようとはしなかった」とし、「たちんぼをやっていても、25(歳)ぐらいまでしか売れないというか、お客さんがつかないと思って、手に職をつけたいと思った」と、その世界から抜け出した。 児童相談所や福祉の施設などから支援を受けられる立場でもあったが「支援とかそういうのではなく、ただ寄り添ってほしい。あそこにいる子たちは人間不信の子が多いから」という思いが、強引に辞めさせることなく、愛を持って接した山田さんによって救われた形だ。