自工会、モビリティ産業として⽬指す“未来の姿”を描いた「自工会ビジョン2035」発表
日本自動車工業会は1月7日、2035年に向けたビジョンを示す「自工会ビジョン2035」を発表。同ビジョンは、自動車産業がモビリティ産業へと変革する中で目指す「未来の姿」を描いたもので、日本の自動車産業の置かれた状況や危機意識、業界としてすでに取り組んでいることなどをとりまとめた。 【画像】自工会ビジョン2035 「自工会ビジョン2035」で目指す未来の姿については、政府・他産業・スタートアップ、そして次代を担う若い世代との共創により2035年の未来を実現していくと、マルチパスウェイによるカーボンニュートラル推進に向けた「モビリティを⽀えるインフラの整備」「サプライチェーン強靭化・循環型社会の実現」、デジタル技術による新たな価値創造に向けた「社会課題の解決」「ユーザー体験の進化」といった4つの領域で、政府、自動車産業、他産業が連携して取り組みたいことをとりまとめた。 より具体的には、サプライチェーン強靭化・循環型社会の実現については、政府に対して、エネルギー政策・⽅針の明確化(再エネ、⽔素等)、⾃由で公正な環境づくりに資する通商政策、半導体等の重要部品関連の⼈材育成などの要望を盛り込んだ。 これまでに、自工会では2023年に、カーボンニュートラルやDX、国際競争力確保などに関する「7つの課題」を定め、「物流・商⽤・移動の⾼付加価値化/効率化」「電動⾞普及のための社会基盤整備」「国産電池・半導体の国際競争⼒確保」「重要資源の安定調達 強靭な供給網の構築」「国内投資が不利にならない通商政策」「競争⼒のあるクリーンエネルギー」「業界を跨いだデータ連携」といった項目で対応を進めてきた。 自工会が「7つの課題」を含む取り組みを進める中では、様々な危機意識が鮮明となり、また産業を取り巻く環境や世界情勢も大きく変化するなど、産業の枠を超えた連携の重要性が一層高まっているとし、全ての課題の解決には他産業や政府と連携し、産業の枠を超えたオールジャパンで取り組みが必要であると説いている。 「自工会ビジョン2035」では、日本の自動車産業が描く未来の姿に理解を深めてもらい、希望を共有してもらうことを目指して作成したもので、策定にあたっての思いに、自工会 会長の片山正則氏は、以下のように述べている。 いま私たち⼈類は、かつてないほど不確実性が増した不安定な時代を⽣きており、培ってきた良識や知恵を使うことを求められています。 国際情勢は地域紛争や安全保障問題も顕著となり、通商においても政治的な影響が⾊濃く反映されることが懸念されるなど、経済合理性だけでは解決策を⾒出すことが難しくなっています。 ⽣活⾯では、AIの進化に象徴されるように、技術の⾰新が⽣活やビジネスに⼤きな恩恵をもたらす⼀⽅、同時に技術の⾰新がつくり出す負の側⾯をコントロールする⼒が求められています。 さらに、⼈類共通の課題である地球温暖化への対応も、各国・地域の取り組みには⼤きな温度差があり、その⾒解はますます分かれつつあります。まさに混沌とした世界に突⼊しつつあり、私たちの未来や暮らしを守っていくためには、どんな状況であっても柔軟に、しなやかに、様々な課題に対応していく必要があります。 ⾃動⾞産業も、これまで新たな⽣活様式や暮らしの創造を通じて、国の経済⼒や産業全体の競争⼒の⼀端を担ってまいりましたが、技術⾰新と地政学的な不安の⼤波に直⾯し、かつての競争優位性は⼤きく揺らいでいます。新たなプレーヤーも多く市場に参⼊し、企業単位では⽣存競争が熾烈化する中、今後、通商・産業政策の⾯でもますます厳しい局⾯を迎えることが懸念されます。 そんな中で、⽇本の⾃動⾞産業はどのような道を歩んでいくべきでしょうか。これまで培ってきた競争⼒の地盤は、⾃動⾞メーカーの企業努⼒のみでは成し得なかったものです。これは、⻑い歴史の中で形成した産業基盤、すなわち550万⼈の仲間、さらには社会による理解があってこそ成⽴したものです。時代と技術の進化により事業活動は⼤きく変化しなければならないものの、この競争⼒の源泉は不変であり、その裏付けとして、社会全体からの理解を⽋くことはできません。 ⽇本の⾃動⾞産業は、社会への貢献を最優先とし、新たな産業基盤の構築に向けて全⼒で取り組んでいます。それは他産業を含めた産業界全体の協⼒があってこそ成し遂げられるものであり、そうした思いが、経団連モビリティ委員会の発⾜へと繋がりました。そして、この経団連モビリティ委員会が優先して取り組むテーマを「7つの課題」と定め、他産業の皆さまとともに具体的な取り組みを進めています。 「7つの課題」を定めた当初に⽐べ、環境変化のスピードも上がっています。そのため⽇本の⾃動⾞産業は、⼀層の推進⼒、いわば「元気⽟」が必要であり、そのエネルギーの源は社会の皆さまからの応援と、⼤局を⾒たご理解に他なりません。 今回まとめた「⾃⼯会ビジョン2035」は、社会の皆さまに、⽇本の⾃動⾞産業が描く未来の姿に理解を深めていただき、希望を共有していただくことを⽬指して作成したものです。より多くの⽅々と同じ夢を抱き、産業界がその実現に向け責任を持って取り組むことで、⽇本をより良い社会にしていきたい。この「ビジョン」には、そのような⽇本の⾃動⾞メーカー14社・⾃⼯会の強い思いが込められています。
Car Watch,編集部:椿山和雄