「敵国の言葉なぜ学ぶの?」逆境の中でロシア語専攻の道を選んだ学生に聞いてみた ウクライナ侵攻開始時には高校生、周囲から冷たい反応も
ウクライナ侵攻から2年が経過した。日本社会にはロシアに対する非難めいた論調や嫌悪感が色濃くある。ロシア語専攻の学生らの多くも、「なぜ敵国の言語を学ぶのか」と心ない言葉をかけられるなど、風圧の強まりを実感している。侵攻が始まった当時、高校2年生だった大学1年生は今、なぜロシア語を選び、どのような思いで学習に励んでいるのか。神戸市外国語大のロシア学科を卒業した記者(29)が、後輩たちに聞いてみた。(共同通信=小島拓也) 広がるスポーツ界のロシア除外、為末大さんの考えは? ウクライナ侵攻にどう対応すべきか
▽祖母は「あり得ない」と冷たい反応、同じ志の仲間がモチベーション 取材にはロシア学科1年の福田拓人(ふくだ・たくと)さん(19)、菊田暖音(きくた・はるね)さん(19)、土井真理奈(どい・まりな)さん(19)、下野江翔平(しものえ・しょうへい)さん(19)の4人が応じてくれた。 ―なぜロシア学科を選んだのですか? 福田 もともとロシアについてあまり知らなかったのですが、戦争をきっかけにロシアがどういう国なのか興味を持ちました。なぜウクライナに侵攻したのか、背景を学びたいと思いました。 菊田 地元が富山県で、中古車輸出の関係でロシア人がたくさんいました。仲良くなったロシア人がホームパーティーに招いてくれたり、通っていた空手教室の道場まで、私と兄を車で送ってくれたり。ロシア人は一見、すごく冷たそうに見えますが、仲良くなったらとても優しいし、心温かい印象でした。ロシア人と関わってきた私から見たら、報道されているような残虐な人たちには見えませんでした。彼らについて学び、知ることが戦争を終わらせる第一歩なんじゃないかと思い、ロシア語を選びました。
土井 元々は英米学科に入ることを目標にしていましたが、共通テストであまり点が取れませんでした。その時に予備校の先生がロシア学科を勧めてくれました。日ロ関係は北方領土問題もあり、政治面では対立しています。ただロシアには天然資源があり、経済面で日ロが手を結ぶと強いと言われました。ロシアもウクライナも戦後の復興には時間がかかると思うので、その時にロシア語を話せることは強みになるとも思います。 下野江 大学では英語だけでなく、他の言語も習得したいと考えていました。ロシアは今、世界の脅威になっています。ロシア語と英語を使ってロシアの情報を得て発信し、平和に少しでも近づけることができたらと考えました。 ―周囲から反対されませんでしたか? 福田 ソ連時代のイメージが強いようで、祖母にロシア学科を志望していることを伝えたら「ありえない」「何を言っているんだ」と冷たい反応でした。地下鉄で通学していますが、ロシア語の文法書を開いていると、見ず知らずの人から冷たい視線というか、「まともじゃないな」とけげんな顔をされたこともあります。「ロシアって…」という声も聞こえて。