新入社員向け指南書「そんな会社なら辞めちゃえ!」【作家・鈴木涼美のコラム】
世間的に、入社一年目で退職なんてするとあまりに協調性やこらえ性がないのではないかとか、一つのことを続けることこそ尊い労働のような圧力を感じたことがある人もいるかもしれません。 一つのことを続けている人でかっこいい人はいますが、たとえば十八歳の友人が一つの男だけ見て一生添い遂げますと言ったらもうちょっとほかも見てみたらという気分になるし、文句や愚痴を死ぬほど言いながら同じ人とずるずる同棲を続けている友人には周囲の多くは別れて外の世界を見たらいいと助言する気がします。 自分に合わない恋人と何とか折り合いをつけながら長く付き合って銀婚式を迎えるというのも一つの生き方かもしれませんが、それだけを褒めるという人はあまりいないのと同じで、合わない会社に見切りをつけるのも女の潔さだと私は思うわけです。
一所懸命な若い世代にエール
別にちょっとストレスはあるけどしばらくは頑張ってみようと思うことはもちろん尊いことだし、配置換えをしたら楽しくなったという体験談は知り合いからもよく聞きます。 いますぐ辞めることが自分を救うなら辞めてしまえばいいし、いつでも辞めてやるわと思いながら根強く十年働くのでもいい。少なくともこの男と別れたら結婚できないかも、と言いながらDVに耐える、みたいな強迫観念で、一つの相性の悪い職場で貴重な若さを浪費するよりは、もっと身軽であっても良いと、生真面目で一所懸命な若手たちを見ていると思ってしまいます。