念のために受けた検診で「乳がん」が発覚。「両胸切除」することになった私は【専門医の解説付】
再発が心配で気持ちが落ち込んだことも
田中さんは電話の向こうの看護師に、「最悪のことしか思い浮かびません」と言ったこともあります。 「最悪というのは“再発”のことです。先生は、『乳がんは早期でも全身に小さいがん細胞が回っている全身病と受け止めてください』、とおっしゃっていました。 それが引っかかって、どこかでガンが育っているのではないかとか悪い想像しかしなくなったんです。再発したり転移したりしていたらどうしようと、まだ起きてもいないことを先取りして、一人で戦っている状態でした。全然起きられないし、布団を被って寝ていたい。おっぱいも無くなったしどうしようと思う日が続きました。 でも、先生の丁寧な説明のおかげでだんだん悩みも薄らいでいきました。原発のガンを切ったら全身補助療法というホルモン剤を飲む治療をして、全身に飛んでいっているかもしれない小さながん細胞の働きを弱めて、再発や転移が起きないようにする治療だと説明していただきました」
「いいと思うよ」と乳房再建を後押しされて…
術後落ち込んでいた時は、乳房再建のことなど考える余裕もなかった田中さん。2023年の春頃、落ち着きを取り戻すと同時に乳房再建について考えるようになりました。 「鹿児島なのでどこの銭湯に行っても温泉を楽しめます。大好きだったのですが、母と温泉に行っても『やっぱりぺったんこはな…』と思うようになりました。自分の乳房が無くなって悲しいというよりも、私の胸を見た人が怖いだろうなと思いました」 シリコンで作られた胸に貼るタイプの乳房もありますが、乳房再建という治療が確立されているのなら、リアルにこだわりたいと思った田中さん。 「主治医に、『やっぱり再建しようかな』と相談したら、喜んで背中を押してくれました。『乳がんを切ったからそれでいいでしょ』という医師もいるそうですが、私の主治医は、おっぱいを入れるまでが治療だと思っていて、『いいと思うよ』と言ってくれました」 主治医に病院の形成外科を紹介してもらってエキスパンダー(組織拡張器)を入れる手術を行い、3月にはインプラントを入れました。 「無事おっぱいができました。ケロイド体質だったので、まずはケロイドの治療から。乳首や乳頭、乳輪の形成は傷の状態が落ち着くまでしばらく待ってからやることになっています。皮膚や背中に突っ張りを感じることもありますし、人工的な処置を受けたんだなという感じはします。でも、今はもう温泉にも行けるようになりました」