訪日客が明暗分けたスキー場経営 白馬村盛況、値上げでも円安追い風 「地域密着」苦境、雪不足が追い打ち
新型コロナウイルスが5類に移行して迎えた2023~24年のスキーシーズン。質の良いパウダースノー(粉雪)が「ジャパウ」と呼ばれ世界的に知られる北安曇郡白馬村などのスキー場は、インバウンド(訪日客)を取り込んで急回復した。一方、訪日客を取り込めていないスキー場の多くは苦境にある。暖冬の影響で雪不足のため営業期間の短縮を迫られた事業者もあり、業績の明暗がくっきり分かれている。(大久保みちる、渡辺司馬) 【グラフ】インバウンド大幅増 白馬村・小谷村・大町市の10スキー場
共通リフト券 1500円値上げでも
4月22日午後、エイブル白馬五竜スキー場(白馬村)。雪が残る山頂付近のコースでは、スキーやスノーボードを楽しむ人の間で英語や中国語が飛び交っていた。「白馬の雪は素晴らしい」と、ニュージーランドの中学生、ケイレブ・トンクスさん(13)。3月上旬から両親らと白馬村でスキーを楽しんでいるという。 同スキー場は、村内のエイブル白馬五竜IIMORIとHakuba47ウインタースポーツパークと共通リフト券を販売。同券の販売ベースで、今冬季の来場者数は3月末時点で約48万人で、前年同期比で5万人多い。 リフトの更新費用や光熱費などの上昇もあり、今季から共通リフト券を1500円値上げして7500円にした。それでも増加する訪日客に、エイブル白馬五竜を運営する株式会社五竜(白馬村)の小林英樹次長(54)は「円安の影響もあり、白馬エリアのスキー場の規模や雪質の良さに『割安感』が感じられている」とみる。
訪日客の半数はオーストラリア アジア圏も年々増加
一般社団法人ハクババレーツーリズム(HVT、白馬村)は、白馬村、小谷村、大町市の計10スキー場の来場者数が、今季は新型コロナ禍前を超える163万7千人になると予想する。この好調を引っ張るのは訪日客だ。 国内客は昨冬と比べて約3万8千人減少する予想だが、訪日客は30万7千人増える見込み。HVTの中川友生(ともお)事務局長(46)は「スキー場経営が訪日客によって成り立つ構造に変化している」とする。 3市村の訪日客の半分はオーストラリア人が占めるが、台湾や香港、シンガポールなどアジア圏からの人も年々増えている。HVTは近年、アジア圏へのプロモーション活動を積極的に進めている。