吉田沙保里、伊調馨ら不在の女子レスリング界に起きている変化
レスリングの天皇杯全日本選手権の最終日が23日、東京の駒沢体育館で行われ、女子最軽量の50キロ級では異変が起きた。リオ五輪の48キロ級金メダリストの登坂絵莉(東新住建)が左足ケガのために棄権を決めたが、優勝候補の筆頭だった2017年世界選手権優勝の須崎優衣(JOCエリートアカデミー/安部学院高校)が準決勝で敗れたのある。。 準決勝で須崎を下して優勝した入江ゆき(自衛隊)は、2012年の世界ジュニア選手権で優勝し、常に女子最軽量級で優勝候補の一人に数え上げられてきたが、世界選手権への出場経験はない。 とはいえ、かつて登坂が苦手とし、2012年末まで一勝もできなかった相手だ。 これまで試合で先制はするものの、試合終盤に攻められず逆転負けするパターンが続いていたが、今大会は攻めの姿勢を維持。準決勝の須崎との試合では、リードされたことに慌てて慎重さに欠いた須崎のタックルをことごとく得点に変え、10-0のテクニカルフォール勝ちをおさめた。 決勝戦だけは最後に守りに入ってしまい、五十嵐未帆(至学館大学)に追い上げられたが、6-5で逃げ切り判定勝ちで2年ぶりの全日本選手権優勝を決めた。 「弱気になったり、途中で攻める気持ちよりも守ろうと考えたりしてしまったけれど、今回はそう考えずに試合ができました。東京五輪に出て金メダルをとるという気持ちがますます強くなりました」 嬉しさをどう表現していいのか戸惑うような口調で今大会の振り返りを話し始めた入江だったが、2020年東京五輪への思いだけは力強く、はっきりと告げた。セコンドについていたロンドン五輪金の小原日登美が「決勝の最後で守ってしまって課題が残りました。でも、これからです」と告げるように、停滞を続けていた25歳は、あらためて成長を始めたようだ。 敗れた須崎は、「アカデミー生として最後の大会だったから優勝したかった」泣きじゃくりながら、「一から出直します」と答えるのがやっとだった。世界チャンピオンになって以降、本来の攻めではなく、勝利を守るための試合展開が目立っていたため、その変容を試合結果で宣告された形になった。 レスリングは来年から国際ルールが大きく変更され、女子は50kg、53kg、55kg、57kg、59kg、62kg、65kg、68kg、72kg、76kgの10階級になる。そのうち、東京五輪で実施されるのは50kg、53kg、57kg、62kg、68kg、76kgの6階級だ。 女子レスリングの強国ではあるものの、競技人口が厚いわけではない日本は、「さらに五輪階級に集中した強化が必要だろう」と栄和人・日本協会強化委員長は今大会を振り返って語った。