スバルとマツダ、アサヒとキリン…業界のライバル同士は、いかに異なる戦略をとって成長してきたか?
第4回で説明したように、自己株式を取得するとROEは上がり株価も上がります。つまり、稼ぎ出した営業キャッシュフローの約6割を株主のために使っているのです。欧米の企業は基本的に株主資本主義ですから、株主のために経営してるようなものなのです。 IBMが欧米流の優良企業のキャッシュの使い方、トヨタが日本流の伝統的な優良企業のキャッシュの使い方です。アマゾンは欧米の会社です。しかし、キャッシュの使い方はトヨタに似ています。キャッシュの使い方としては、アマゾンとトヨタはよく似ているのです。 お気づきになっているかもしれませんが、前ページの図表3-8はIBMだけが古い2018年までのデータを使っています。なぜ2018年までのデータを使ったかと言えば、IBMは2019年に3兆円を超える額のお金を投資してクラウド関連の会社を買収しており、その数字を加えるとIBMのキャッシュの使い方の傾向がよくわからなくなるからだったのです。 2019年のデータを加えたのが下図(図表3-9)です。IBMは2019年に例年とは全く額の異なる金額を投資にあてていることがわかります。これはクラウド関連の会社の買収のための投資キャッシュフローです。 このIBMが欧米流の企業経営の典型です。IBMは2004年に、“ThinkPad” の名前で知られていたコンピューター事業をレノボに売却して、プロダクトからソリューションへ大きく経営の舵かじを切りました。そしてまた2019年に、クラウドの分野へ企業の方向性を大きく転換したのです。そこには間違いなく、経営陣の大きな意思決定がありました。 ドラッカーは「今日の企業そのものが過去における資源の投入の結果である*72 」と言います。そうなのです。企業の未来は明日つくられるものではありません。今日の経営陣の意思決定が、企業の未来をつくるのです。 *72『マネジメント 課題、責任、実践』P・F・ドラッカー著、上田惇生訳、(ダイヤモンド社)の第7章
國貞 克則