スバルとマツダ、アサヒとキリン…業界のライバル同士は、いかに異なる戦略をとって成長してきたか?
アサヒはビール業界世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ社から、2016年に西欧のビール事業を買収し、2017年には中東欧5カ国(チェコ、ポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア)のビール事業を買収し、そして2020年にはオーストラリア最大手のビール会社を買収しました。これらの買収により、アサヒの事業規模はグローバルに大きく拡大したのです。 アサヒとキリンの例を紹介したのは、M&A拡大戦略を推奨するためではありません。過去には、日本企業が海外で行った大型のM&Aが、その後失敗に終わった例もたくさんありました。M&A拡大戦略が良いとか悪いといった話ではありません。 ただ、言えることは、経営陣のある時点の意思決定が、企業の未来の姿を変えていくということです。 次はCSを見てみましょう。下図(図表3-8)はAMAZON.COM,INC.(以下「アマゾン」)・トヨタ自動車株式会社(以下「トヨタ」)・IBM(正しい会社名は INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION、以下「IBM」)のCSの推移です。 キャッシュの使い方としてはアマゾンとトヨタはよく似ています。それは、稼ぎ出した今日のキャッシュのかなりの額を将来の投資に向けているということです。 まずは、トヨタのCSの5年計のところを見てください。営業キャッシュフロー17兆2019億円の約9割にあたる15兆103億円を投資に向けています。これが長期ビジョンで経営している日本の伝統的な優良企業のキャッシュの使い方です。特に製造業は最新の設備を導入し続けない限り競争優位性を維持できません。 しかし、読者のみなさんは「そんなことはどこの企業もやっていることだろう」と思われるかもしれません。しかし、現実はそうでもないのです。 IBMのCSの5年計のところを見てください。稼ぎ出した営業キャッシュフロー829億3100万ドルの約6割にあたる474億2200万ドルを財務キャッシュフローにあてています。この財務キャッシュフローの大半が、株主への配当と自己株式の取得です。