電気自動車はそろそろ「使えるクルマ」になってきたのか?
2015年12月、電気自動車(EV)である日産『リーフ』の世界累計販売台数が、発売から5年で20万台に到達したことが発表されました。ハイブリッド車の先駆けであるトヨタ『プリウス』が20万台を突破したのは発売開始から9年目だったことを考えると、EVはハイブリッド車以上のスピードで普及しつつあるのです。 【動画】スーパーセブンやテスラに乗って電気自動車を体感 でも、世の中の大多数の人には、電気自動車の「使い勝手」が正しく理解されているとはいえないのが現状です。一充電の航続可能距離が短い。充電場所が少ない。充電に時間がかかる、などなど。電気自動車に対して、漠然とネガティブなイメージを抱いている人は、いまだに少なくありません。 私は2013年に手作りで改造したEVスーパーセブンで急速充電だけを繰り返しながら日本一周したのをはじめ、日産『リーフ』や三菱『i-MiEV(アイミーブ)』、テスラ『モデルS』、BMW『i3』などの市販EVで日本各地へ取材ドライブを繰り返してきました。 はたして、EVは実用的に「使えるクルマ」になってきているのでしょうか。あらためてEVの「使い勝手」を整理してみたいと思います。
疑問1:EVの航続距離は短いでしょ?
まだ条件付きではありますが、答えは「ノー」。アメリカのベンチャーであるテスラの主力車種『モデルS』は、90kWhの大容量電池を搭載して500km以上の航続距離を実現しています。今まで24kWhの電池で航続距離228kmだった日産『リーフ』にも、30kWhの電池で280kmの航続距離を実現した車種が追加されました。一気にどのくらいの距離を走れれば「十分」と感じるかは人それぞれ、自動車の使い方にもよりますが、一概に「EVは航続距離が短い」とは言えない時代になってきています。 少なくとも、テスラ『モデルS』であれば「航続距離が足りない」と不満に感じることはほとんどないはずです。とはいえ、『モデルS』の上位モデルは1000万円以上する高級車。誰もが簡単に買える車ではありません。また、30kWhに電池が増量された『リーフ』でも高速道路で一気に走り切れる実用的な航続距離は120~150km程度。今までのエンジン車感覚では「短い」と感じる距離でしかありません。 すでに発売されている『リーフ』や『i-MiEV』、『i3』などほとんどの市販EVは、満充電に近い状態でもメーターに表示される走行可能距離が100kmを下回るのは珍しいことではなく、エンジン車の感覚からすると「いつでもエンプティランプが点灯状態」であるのが現実です。 でも、実際に1日100km以上も走る機会はあまり多くありません。満充電で100kmほどしか走れないEVに乗っていると「日常的な航続距離なんてこれで十分なんだ」と気付きます。エンジン車との比較でEVの航続距離を考えるのは、そもそもあまり意味がないともいえるでしょう。 さらに、EVに使用されるリチウムイオン電池は急激に価格が下がり、性能がアップしています。『リーフ』や『i-MiEV』がデビューした5~6年前と比べて、メーカーの電池調達価格は5分の1程度にまで下がったと言われており、今後、実質的な航続距離が300km以上の新たなEVが続々と登場してきます。現状のEVはまだ「使い方」に制約が多いのは事実。でも、ここ数年のうちに「EVの航続距離が短い」という先入観は時代遅れになっていくでしょう。