大火災から5年…12/8に一般公開再開の世界遺産「ノートルダム大聖堂」12世紀からの歴史と復興プロジェクトの全貌
■ 歴史の“あの瞬間”が目の前に 操作は簡単だが、情報量は圧倒的だ。イメージがつかめるよう、タイムポータルの一例を紹介したい。21個のタイムポータルのひとつ、14番「皇帝の戴冠ー1804年ー」に入ると、ディスプレイに1804年に行われたナポレオンの戴冠式の画像が表示される。主要登場人物にはアイコンが付いており、タッチすると細かな人物紹介。新皇帝の野心や複雑に絡み合う当時の世情を知ることができる。 そして、この画像は1アングル固定ではない。HistoPadを左右に動かすことで、戴冠式の様子をぐるりと360度、見回すことができる。あたかも自分が大聖堂にいて、戴冠式に参加しているような。さらに、1804年から2021年へと“時空を超える”体験も可能。戴冠式の場が今どのようになっているかを見ることができる。 19番「修復現場におけるイノベーション」は東京展に新たに登場したタイムポータル。最新技術を駆使した再建工事の様子が動画や図解で詳しく解説されている。ノートルダム大聖堂の復興のために専用に開発されたロボットの紹介が興味深い。 ■ ノートルダム大聖堂は友愛と普遍性の象徴 展覧会を鑑賞して、もっとも強く感じたのは「歴史へのリスペクト」。1160年に着工された建物を、当時の姿や構造を守りながら、忠実に蘇らせるのは容易いことではない。正確な図面などほとんど残っておらず、どこにどのような建材が使われ、どれだけの強度を持っているかなど、見当もつかない。 復興プロジェクトには多種多様な分野の専門家が参加した。中世の技術に詳しい建築家や歴史家、ドローンやCG解析を駆使する現代の科学者、現場での作業にあたる職人……。ノートルダム大聖堂の復興プロジェクトは、ジャンルを超えた人々が世界中から集まり情報を共有するプラットホームでもあった。 過去と未来をつなぎ、世界中の国が同じ目的のために力を注ぐ。展覧会開幕に合わせて行われた記者発表会で、在日フランス大使館文化部次席参事官のフレデリック・ペニヤ氏がこう語った。「ノートルダム大聖堂はフランスのものではありません。みんなのものです。友愛と普遍性の象徴。そう感じています」。 「特別展 パリ・ノートルダム大聖堂 タブレットを手に巡る時空の旅」 会期:開催中~2025年2月24日(月・休) 会場:日本科学未来館 開館時間:10:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで 休館日:火曜日(火曜日が祝日の場合は開館)、12月28日~1月1日 お問い合わせ:050-3354-7711(パリ・ノートルダム大聖堂展製作委員会事務局)
川岸 徹