「頑張っても報われない」“隠れた貧困”にあえぐ子育て世帯 今必要な支援とは
■ほかの家庭と同じようにしてあげたい
東京都内で暮らすシングルマザーの佐藤さん(仮名)は高校生の長男と小学生の長女と3人で暮らしています。ひとり親になって10年。以前は派遣社員として働いていましたが、子育てにお金がかかることから、一念発起し、5年前に正社員になりました。しかし…。 「正社員になったことで、収入が少し増えたので、いろいろな行政の支援が受けられなくなりました。頑張って少しでも自分で稼ごうと正社員になったのに、派遣社員のときと生活のしんどさが変わらない。むしろ時間的な制約や責任が増えた分、大変なことが増えました」 いま一番心配なのは、子どもの進学のこと。行政の支援が受けにくい中、周りの子と同じように受験の対策をすることも難しいといいます。 「周りの子は全教科塾に通っている中、うちだけ1教科しか通えないことも。特に都心部では進学のために塾に行くのは当たり前になっている中、同じような環境を用意してあげにくいことが申し訳ない。受けられる支援も限られていて、受験をさせるのも大変です」 このほかにも、子どもが部活で使う道具を新しくすることをためらってしまったり、クリスマスなどの行事も家で完結するようにしたり、子どもに我慢をさせることが多く、心苦しいといいます。 「子どもたちも大きくなり、いろいろ家庭の事情がわかってきて、気を使ってか、わがままを言わなくなりました。悲しい思いをさせていると思う。せめて周りの子と同じようにしてあげたいと思って日々、頑張っています」「最近は、ひとり親家庭も増えていて、決して少数の問題ではないと思う。また、地方と都市部では困り方に違いがあると思う。それぞれの層にあった支援があるといいなと思います」
■時代にあわせた支援を
現在、児童扶養手当の支給には所得制限があります。一部支給の場合は上限385万円、全部支給の場合は上限190万円で、ひとり親家庭であることなど条件があります。2024年の11月に基準の引き上げがあったものの、物価の伸びを考えると十分な引き上げではないと支援団体は訴えます。 キッズドアによりますと、これからの季節は子どもの進学や受験のために必要なお金が増え、普段の生活はなんとかできている家庭でも、困窮するケースが増えるということです。中には受験や入学の費用、制服代のためにカードキャッシングに手を出してしまい、より苦しい思いをする人もいるということです。キッズドアは、こうした家庭を中心に食料などの支援を行っていますが、希望者は年々、増えているということです。 少子化が進む中、誰もが子どもを産み育てることに不安を抱かなくてもすむような環境作りが急がれます。特に“隠れた貧困”に悩む家庭は、なかなか気づかれにくく、孤立してしまうケースもあります。時代や社会の動きにあわせ、困っている家庭を取り残さない支援が求められています。