「生成AI」「ペロブスカイト太陽電池」「全固体電池」…24年注目技術をまるっと解説
生成AI基盤 日本語特化、国産モデルで差別化
企業の景況感が回復し、物価と賃金の上昇傾向が続く中、日本経済にデフレ脱却のチャンスが訪れている。ただ油断はできない。それを実現し持続的な成長軌道に乗るためには、生産性向上や脱炭素化の推進などが欠かせない。突破口となるのは技術革新だ。2024年の注目技術をまとめた。 【写真】24年注目の「ペロブスカイト太陽電池」「全固体電池」「GaN基板」 国内通信大手は24年に生成人工知能(AI)の基盤となる国産の大規模言語モデル(LLM)の提供を始める。 NTTは軽量なシステムでありながら世界トップ級の日本語処理性能を持つLLM「tsuzumi(ツヅミ)」を3月に投入する。LLMの性能指標となるパラメーター数を米オープンAIの「GPT―3」の1750億と比べて超小型版で約300分の1、小型版で約25分の1に抑えた。事前学習済み言語モデルの外部に必要なサブモジュールを追加することで、業界特有の言語表現や知識を効率的に学ばせる。「生成AIが使う画像処理半導体(GPU)の数を少なくできる」(島田明NTT社長)のため従来の生成AIより利用料金を抑えられる。 ソフトバンクは24年中にパラメーター数が3500億で日本語に特化した国産LLMの構築を目指す。LLMへの大規模投資はオープンAIなど海外企業が先行している。だが、宮川潤一ソフトバンク社長は「日本の文化やビジネスの慣習などに最適な国産LLMを開発することで、あらゆる産業への生成AIソリューションの導入を支援する」と話す。日本語に特化することで海外の生成AIと差別化できるかが普及のカギとなる。
ナノテラス 軟X線で物質機能解明
化学をはじめとした多くの分野での活用が期待される次世代放射光施設「ナノテラス」が24年度に本格稼働する。低エネルギーで物質に吸収されやすい軟X線を利用したナノレベル(ナノは10億分の1)の分析が可能となり、電子の動きを基に物質の機能を解明できる。日本の持つ軟X線の放射光施設の性能は世界に比べて低かったが、ナノテラスによって世界トップレベルになる。 ナノテラスは東北大学内に整備された。日本には放射光施設が点在しており10カ所目。高エネルギーで物質に吸収されやすい硬X線に関しては、すでに高い性能を持つ大型放射光施設「スプリング8」がある。軟X線をカバーするナノテラスの運用開始により、硬X線と軟X線の双方の高性能放射光施設が国内にそろう。日本の研究力が強化されるだけでなく、海外への技術流出への対策にもつながる。 ナノテラスでは物質の機能を可視化し、材料の表面構造や反応などを観察できるようになる。同施設に隣接する形で企業や大学などの研究者が集まる研究開発拠点を設置予定で、最先端技術を使った新しい素材などの開発が進むと期待される。