映画『ACIDE/アシッド』は酸性雨の恐怖を描くリアルスリラー作品!
2024年の夏も記録的な暑さやゲリラ豪雨など、地球の気候変動を実感させる現象が続出。ここ数年、加速する異常気象を、“今そこにある危機”として取り上げる映画も増加中だ。この『ACIDE/アシッド』はフランス発の作品。ハリウッドとは一味違うムードが、これまた危機感をアップさせる! 地球の温暖化は各国に影響を与えているが、中でもヨーロッパからは毎年のように気温上昇のニュースが届く。本作は異常な熱波に見舞われたフランスが舞台。パリの最高気温は、なんと42度! すでに南アメリカでは気候変動と大気汚染によって酸性雨が降り、深刻な被害を起こしていた。やがて地球の北半球にも影響が広がり、フランス北部では酸性雨をもたらす雲が発生。住民に外出禁止令が出される。そんな切迫したシチュエーションで、主人公のミシャルが、元妻に頼まれて寄宿学校にいる娘を救出に向かい、彼らは信じがたいサバイバルを強いられる。やがて電気や水道のインフラもストップ。隣国ベルギーにいるミシャルの現在の恋人、さらに行く先々の人々に、この異常気象はどんな過酷な運命を与えるのか……。 まず度肝を抜かれるのは、酸性雨の恐怖。空から降ってくる超高濃度の酸は、森林はもちろん、生き物を“溶かす”ほどの威力を持っている。傘や帽子は役に立たない。その酸性雨による被害は、シーンによって容赦ない映像で描写され、思わず声を上げたくなる瞬間も! ミシャル一家は、かろうじて強酸の影響を防げる車を使いつつ、雨が止んでる間に徒歩で移動するなど、ギリギリの攻防が続く。集団パニックが起こったりもするが、家族にフォーカスしたことで、映画を観るわれわれも“自分ごと”のような錯覚をおぼえる。ここが本作の巧みなところ。酸性雨に限らず、あらゆる災害時の教訓になりそうなヒントも隠され、感心してしまう。そして電気もストップすることから、ダークなシーンが必然的に多いので、真っ暗な空間で観てこそ究極のスリルを体感できる。つまり映画館にぴったりの作品だ。 『ACIDE/アシッド』8月30日公開 監督・脚本:ジュスト・フィリッポ 出演/ギヨーム・カネ、レティシア・ドッシュ、ペイシェンス・ミュンヘンバッハ 配給/ロングライド 2023年/フランス/上映時間100分
文=斉藤博昭 text:Hiroaki Saito