元鳥取県知事の片山善博氏 部長時代に気付いた男女格差の「からくり」とは
鳥取県のジェンダー平等の取り組みが注目を集めている。県の地方公務員に占める女性管理職の割合は2023年度に8年連続で全国トップとなり、47都道府県で唯一20%を超える。きっかけとなったのは、鳥取県知事を務めた片山善博氏が、総務部長として同県に赴任したときに感じた違和感だ。管理職に女性がいない「からくり」を突き止め、是正に乗り出した。性別で差を付けない人事配置に2年でこぎ着けたという片山氏に、ジェンダー平等を推進するヒントを聞いた。
課長のときは気付かなかった 男女格差の違和感
――1992年に自治省(現在の総務省)から鳥取県庁に赴任し、総務部長に就任しました。管理職が男性ばかりであることに違和感を覚えたそうですが、当時は男女で仕事内容に差があっても不思議に思う人はまだ少なかったように思います。 「実はその約10年前にも鳥取県庁で課長をしていましたが、そのときは私も特に違和感を覚えなかったんです。その後、東京に戻って様々な仕事に携わった中でも、鳥取県の総務部長に赴任する直前に、当時の自治省で国際交流の担当をしたのが大きかったと思います。自治体間の姉妹都市交流の支援などが中心で、外国の自治体との付き合いが多かった。特に欧米系では男女共同参画がすでに当たり前だったので、そういう雰囲気にいったん慣れてしまいました。そこから鳥取県庁の総務部に行き、毎週月曜の幹部会議に出ると、全員男性。部長の私、次長、課長、その下の課長補佐もみんな男性で、これはやはり違和感を抱きましたね」 「もう一つは、ちょうどそのころ国際交流員として韓国から招聘(しょうへい)していた若手女性とのやり取りです。鳥取県に来て数カ月たったころ、彼女が『部長さん、変ですよ』と言う。自分の所属する課には男性も女性も同じくらいいるのに、女性は補助的な仕事ばかりしていると。外部の目から見た率直な印象を聞き、やっぱりそうかと思いました。自分の違和感と相まって、これは改善に乗り出そうと考えたわけです」 ――男女に差があったのは何が原因だったのでしょうか。 「総務部長は人事担当部長でもありますから、職責の一つとして、どうしていびつな状態になっているのか、何か訳があるのだろうかと調べ始めました。ヒアリングしてみたところ、『県庁の仕事は女性に向かない』と言うんです。なぜかと尋ねると、特に理屈があるわけじゃないけれど、経験上向いていないと思いますと。それはおかしい。外国の自治体には女性管理職がたくさんいるのに、日本の自治体の仕事だけ女性に向いていないわけがありません」 「やっぱり構造的な問題がありそうだと考えて調べていくと、だんだんからくりが見えてきました。女性は基本的に入庁してからずっと、異動のたびにその課の庶務の仕事をもっぱらあてがわれていた。そうして10年、20年たつと、庶務以外の仕事はできなくなります。様々な経験を積んで人的ネットワークも築いた男性と、庶務だけの大ベテランの女性を比べて、どちらが課長に向いているかを考えれば、答えは明らかでした」