「覚える」ために必要なのは○○力だった!【50代からの脳トレ③】
「ちゃんと勉強したのに、なぜすぐ忘れてしまうのだろう…」。勉強をしていると、学んだ内容を覚えていない自分にショックを受けることも多いはず。でもこれは「忘れてしまったのではなく、思い出すことができていないだけです」と、脳内科医の加藤俊徳さん。頭に入れた内容をいつでも“引っ張り出せる”脳をつくるコツを教えてもらった。
記憶という“荷物”が増え、ありかがわからなくなる!
「昨日テキストを読んだところなのに…」「ここまで出かかっているのに…」。そんな“大人の勉強あるある”で、もどかしい思いをしている人も多いのでは? 「脳が老化して記憶力が落ちているからだ」とネガティブな気持ちになりそうだが、「落ちているのは記憶力ではなく、覚えたことを引っ張り出すための“検索力”です」と加藤先生。 「年齢が上がるほど記憶力は落ちていくと思っている人は多いのですが、記憶そのものが消えてなくなるということはありません。記憶していることを探し当てる、つまり検索する力が鈍っているだけです。 大人は人生経験が長い分、脳にしまわれている情報量も膨大。家の片づけにたとえるとイメージが湧きやすいと思いますが、生活していくうちに荷物がどんどん増え、『あれはどこにしまってあったっけ?』というものが出てくる。 捨ててはいないのだから家の中のどこかにはあるはずなのに、ありかがわからず出すことができない…。まさにその状態といえます」 「学生時代のほうがもっと勉強していたけど、すぐに思い出せた」という人も多いかもしれない。 「大人はただでさえ学生よりも記憶の積み重ねが多く、しかも勉強だけしていればいいというわけではありません。日々の仕事、家のことなど、たくさんの必要な情報がどんどん脳へ送られてきます。それらの“荷物”に埋もれてしまって、勉強した内容がまた奥へと行ってしまうのです」
「その日のうちに思い出す」で検索力を上げる
こうして埋もれていく記憶を埋もれたままにしないためには、「定期的に引っ張り出す作業が大事」と加藤先生。 「引っ張り出すとは、思い出すということ。つまりは復習です。 私たちの記憶は、一時的な記憶である短期記憶と、長い期間の記憶である長期記憶に分けられます。学習した内容が長期記憶に保管され、それを自在に引っ張り出すことができる、これが『勉強が身についた状態』といえます。 しかし前述のとおり、大人の脳の長期記憶に保管されるのは、勉強のことばかりではありません。そのため、長期記憶があふれ返って何がどこにあるのやら、という状態になりがちです。 脳には、繰り返し入ってくる情報は長期記憶に送られやすく、また引っ張り出しやすくなるという特性があります。だからこそ、勉強には復習が大事なのです。 朝に20分間の勉強時間を取ったとして、それでいっぱいいっぱいという人も多いでしょう。記憶が定着しやすい1時間以内の復習は現実的に厳しいと思いますが、せめて24時間以内、その日のうちにを意識しましょう。 復習といっても、またテキストを広げて同じところを読んだり書いたり、といった学生時代の王道的な方法でなくてもいいのです。“脳は連続性のあることに対して、よく働く”という特性を持っています。