【一発でわかる】「頭のいい人、普通の人」伝え方の決定的な違い
世の中に流通する情報の数は増え続けている。世界中の情報量は、2025年には、175ゼタバイトになるらしい。1ゼタバイトは「世界中の砂浜の砂粒の数」と言われているので、175ゼタバイトとは、想像を絶する情報量だ。そのような混沌としたデジタル社会の中では、自分の伝えたいことを聞いてほしい相手に正確に、素早く届けるのは至難の業だ。その解決策となる「情報の創造、共有、消費について考える新たな手法」として、「スマート・シンプル」を提唱する本がある。全米25万部を超え、世界16か国以上で刊行の話題作『Simple「簡潔さ」は最強の戦略である』だ。「スマート・シンプル」とは何か。本書の内容をもとに紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部) ● 物事をスマートに、短く表現する「スマート・シンプル」 本書の著者は、現在670万の定期購読を誇るデジタルメディア「アクシオス」の共同設立者、ジム・バンデハイとマイク・アレン、ロイ・シュウォーツの3人だ。 そして、彼らが提唱する「スマート・シンプル(賢明な簡潔さ)」とは、物事をスマートに、そして短く表現することである。 彼らは、「その両方を習得すれば、思考を研ぎすまし、時間を節約し、雑音をはねのけることができる」と語る。 ほとんどの人は言いたいことを思い浮かべると、それを感傷的な言葉やくどくどした補足、無意味な余談で台無しにしてしまう。簡潔さが犠牲にされている。(P.25) 簡潔に言えないから伝わらない。そして、情報量ばかりが増えていくというわけだ。 ● CIAでも「一番興味深いこと」を伝えるのは難しい 本書によると、海外ドラマなどでお馴染みのCIA(米中央情報局)ですら、情報の伝達やテキストコミュニケーションにおいて、問題を抱えているという。 同局の分析官たちは世界でもっとも興味深い機密情報をつかんでいた。ところが多くの分析官は言葉のもやのなかに、きわめて重要な最新の事実や脅威を埋もれさせていた。(P.42) CIAは機密情報を扱う機関だが、機密文書の作成には大勢のスタッフが関わっている。 著者の一人であるマイク・アレンは、2019年、CIAから「山のようなデータのなかから本当に興味深いデータを探し当てる得意技について、講演を頼まれた」のだそうだ。 そこで彼は、どんなときでも役立つ秘訣として、データの作成者に対して、「その情報に含まれるいちばん興味深いものは何か」と尋ねるように、と教えた。 しかし、実際にレポートを書かせてみると、その興味深い情報を埋もれさせてしまったり、省いてしまったりすることすらあったのだそうだ。 CIAで働くような人たちでもそんな失敗をするのだなと驚くと同時に、機密情報をまとめた文書がそのような状態で大丈夫なのだろうか……と不安になってしまう話だ。 ● ここが違う ──いい伝え方は「シンプルで、ポイントが明快」 そこでマイクは、かつて大統領執務室向けに日々のインテリジェンス情報を簡潔にまとめた「大統領日報」を執筆し、現在はアクシオスで「スマート・シンプル」を実践しているフィリップ・デュフレーヌに、架空のCIAメモを修正してもらった。 いかに、「スマート・シンプル」が簡潔でわかりやすいかがよくわかるので紹介しよう。 以下は、CIAがアフガニスタン情勢について記したと想定する警告文だ。 ×BEFORE アフガニスタン治安部隊が崩壊寸前、脅威レベル上昇 アフガニスタン政府と治安当局は退避計画を協議している。現地の情報によれば、この地域の治安部隊の大部分は、来るべき攻撃に備えた組織的な対抗策をいっさい計画していない。暴力行為につながる活動が一気に活性化することが予測される。 タリバンはわずか1日でさらに3つの州都を制圧したのち、カブール全域でバリケードを張りめぐらせ、いまや数日以内に首都圏を掌握するおそれがあり、われわれの情報源はリスクレベルの高まりを伝えている。情報源の信憑性は高い。(P.43-44) こちらと同じ考察を「スマート・シンプル」で表現した場合が以下になる。 ○AFTER 【警告】タリバンの台頭 タリバン武装勢力は静けさを保っているが、カブールの情報筋は部隊と武器の移動を察知し、まもなく緊張状態が暴力に発展すると示唆している。 ▶︎なぜそれが重要か?:カブール市内のアメリカ人は警戒を強め、米軍が訓練しているアフガニスタン軍は演習を中断し、戦闘開始に備える必要がある。 ▶︎脅威レベル:上昇中(P.44) この2文を比べてみたらわかるように、AFTERの方が圧倒的にわかりやすい。 どこがポイントになるかをしっかり押さえて簡潔に書くことで、大事な情報が適切にわかりやすく伝えられるのがよくわかったのではないだろうか。 ● 「スマート・シンプル」に書くための4原則 CIAのように、国の安全を左右するような重要な情報ではないとしても、わかりやすく簡潔に伝えるのは重要なことだ。 例えば、ビジネスシーンで「スマート・シンプル」に物事を伝えられるようになると、きっと周囲から一目置かれるようになるはずだ。 「スマート・シンプル」に文書を書くための原則は次の4つだ。 ①「タイトル」で心をつかむ 記事のタイトルでも、メールの件名でも、SNSなどの競合から誰かの注意を引き離すには、短く強い語句が必要だ。(P.31) ②「リード文」でいちばん大事なことを伝える 最初の1文(=リード文)はもっとも印象的であること。相手の知らないこと、知りたいであろうこと、知るべきことを伝える。単刀直入に、短く、鋭い文にする。(P.31) ③「なぜそれが重要か?」を文脈で示す 私たちが実際に詳しく知っていることはほんのわずかだ。(中略) 誰もが質問することを恥ずかしく思ったり、恐れたりしているが、新しい事実やアイデア、見解が「なぜ重要なのか」については、ほとんどいつも説明してもらう必要がある。(P.31-32) ④「さらに知る」で詳細を伝える 相手が望む以上のことを読ませたり、聞かせたりしてはいけない。さらに知りたいかどうかの判断は相手に委ねること。(P.32-33) どれもおすすめのメソッドだ。ぜひ試してみてほしい。
ダイヤモンド社書籍オンライン編集部