幼保小の接続問題、通知表廃止した香川小で新たな実践「スタートカリキュラム」
「学校探検したい!」から始まった「教室表示プロジェクト」
──入学直後の子どもたちから「やりたい!」と声があがった「学校探検」を行ううち、教室表示が漢字で書かれていて何の教室かわからないから、ひらがなを学習しながら教室の看板をつくって掲示しよう! と「教室表示プロジェクト」を行ったそうですね。 スタートカリキュラムの実践で大切にしていたのは、子どもたちが日々の生活を豊かに過ごしていく中に、学習内容が埋め込まれていくように活動することです。それが、本当の意味での「深い学び」につながるのではないかと。 1年生は国語科でひらがなを学びますが、ただ黙々と練習帳に書いて覚えさせるのではなく、「子どもたちがひらがなを学びたくなる、そして書きたくなる必然性が生じるのはどんなときか」を考えました。本校には、歴代の卒業生が木を彫ってつくった教室表示があるのですが、「図工室」「給食場」などすべて漢字なのです。これを、1年生でも読めるよう、ひらがなバージョンでつくるプロジェクト学習にするのはどうかと思いつきました。 そこで、入学直後の子どもたちから「学校探検したい」という声があがり、実際に学校探検しているときに、「教室表示を、1年生でも読めるようにひらがなでつくってみない?」と、子どもたちに提案したのです。子どもたちは「やりたい! いえーい!」と大喜びでした。 ──ひらがなによる教室表示をつくるために、ひらがなの学習が始まったのですね。その後プロジェクトはどのように発展していったのでしょうか。 「教室表示をつくる」というモチベーションがあるため、子どもたちがひらがな学習に向かう姿勢は真剣そのものでした。特別教室の名前の語尾に「室」(しつ)がついていることに気づいた子どもたちからの提案で、ひらがな学習は「し」「つ」から始まりました。「教室表示プロジェクト」は、前期は「生活科」と「国語科」のひらがな学習、後期は算数科も加わり、子どもたちが切った木の数を数える活動を通して「20よりも大きい数の学習」を行いました。 さらに、教室表示が完成したあと、校長先生に教室表示を飾っていいか相談したり、全校児童に教室表示をつくったことを伝えるためにチラシやポスターをつくったり、校内放送で告知したりもしました。 子どもたちは、ひらがなや数を学びながら教室表示を皆で力を合わせてつくり、全校児童に自分たちの取り組みを知ってもらうことで、充実感や一体感、クラスへの所属感などを体感し、大きく成長できたと思います。 年度が変わり、新1年生が教室表示のひらがなを読んでわかる様子を2年生になった子どもたちに伝えると、とても喜んでいました。誰かのためにしていることが、自分のためにもなっている。このような学びを積み重ねることが、より豊かに生きる意欲につながるのではないでしょうか。 ──ほかに、どのような時間割を子どもたちとつくり、実践したのでしょうか。 本校の敷地に、桜やイチョウなどの木が生い茂る「香川の森」があります。生活科や図画工作科で自然物を使う活動を秋の時期に行っているのですが、授業で使われなかった落ち葉が燃えるゴミとして捨てられていたため、子どもたちと腐葉土づくりができないかと考えました。 春の花を栽培するために「香川の森」にある土を植木鉢に入れる際、子どもたちから出た「落ち葉もいっしょに入っちゃうけどいいの?」という質問に「葉っぱは土になるから大丈夫だよ」と答え、「落ち葉が土になるか、実験してみる?」と提案。子どもたちから「うん、やるやる!」と声があがり、「腐葉土プロジェクト」に取り組みました。 また、冬のいちばん寒い時期に、氷に色を塗って創作活動できたらと思い、子どもたちと、家庭科室のたらい20個に水をため、葉や花などを入れて毎日観察しました。 ある日ついに氷ができ、子どもたちは大喜び。その日の時間割はほかの活動の予定だったのですが、「今すぐ氷を使って活動したい」という子どもたちの思いを感じ、時間割を変更して氷遊びの時間に。皆でたらいからそっと氷を取り出し、絵の具で氷に色をのせ、「氷のアート」を楽しみました。これらは私の実践のほんの一部です。
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