M&A失敗、業績低迷、社員続々退社はなぜ起こる?仕事がうまくいかない理由を解き明かす「ソース」に脚光
若い人たちは「当たり前だよね」と共感
ソース原理とは、人の内側から出てきた直感を外側の世界で実現すること。だから、人から強制されて行動に移すことはソース原理に反するという。 「いまの若い人たちは、上司に指示されても『それは無理です』とか『できません』とか平気で言うと言われているじゃないですか。 それはソース原理からすると極めてナチュラルなことなんです。だって、自分の内から湧き出たものじゃないから。ソースじゃないからです」(青野氏) 実は、青野氏の本業は税理士だ。メルケルバッハ氏と同じくソース原理提唱者のカーニック氏に師事し、ソース原理に基づく経営コンサルティングを行う傍ら、仲間たちと一般向けのワークショップも開催している。 『ソース原理』発売に合わせて各地で開催したワークショップも含め、若い人たちからは「当たり前のことだよねというリアクションが多い」(青野氏)という。 「それは欧米でも同じです。なぜなら、ソース原理は(仕事だけでなく)自分の生活や愛情関係、友情といった人生で大切なことに対してもオープンで、自分を本当に成長させてくれるものだと実感できるからだと思います」(メルケルバッハ氏)
パーパス・ドリブンの落とし穴
多くの企業や組織が掲げる「パーパス」は、ソース原理に近いものなのだろうか。 「組織のパーパスという考え方は、ソース原理的に言うと全否定に近い。組織は人ではないので内側の世界がないじゃないですか。だからソース原理ではそういう考え方をしない。あえて言うなら、組織のグローバルソース(※)のパーパスであれば近いかもしれません」(青野氏) ※グローバルソース:新しいイニシアチブを立ち上げた人。イニシアチブとは、どの講座を学ぶか決める、特定の職種を目指す、起業する、住環境を変える、休暇の計画を立てるなど、何らかの行動を起こすことを指す。また、人が立ち上げたイニシアチブに加わる人をサブソースと呼ぶ。 日本では「パーパス・ドリブンな組織づくり」といったフレーズもよく聞かれるが、青野氏は「パーパス・ドリブンが人をコントロールする手段になっているとしたら、ソース原理的には危ない状態かもしれない」と指摘する。 メルケルバッハ氏も、パーパス・ドリブンについて「外側から来るパーパスに(人が)使われる印象を受ける」と語る。 だが一方で、ソースパーソン(=ソース)にとってはパーパスも非常に重要だと指摘する。
湯田陽子