国民投票法改正案とは 成立したらすぐ改憲につながる? 坂東太郎のよく分かる時事用語
今回の改正案では何が論点になっていた?
野党第1党の立憲民主党が懸念を示していたのが、CM規制の問題でした。有料のテレビCMやインターネット広告を、資金力に勝る陣営・組織が大量に流して圧倒すれば、結果を左右しかねないためです。同党の修正要求を与党側がのみ、改正案の付則に「施行後3年をめどに検討を加え、必要な法制上の措置を講ずる」と盛り込んで衆院での可決に至りました。 国民投票法が定めるテレビ・ラジオ放送や新聞での意見広告は、改憲案に賛成・反対それぞれの政党に同じだけの時間やスペースが割り当てられます。ただしこれは、いわゆる政見放送のような「無料」での放送・掲載のケース。「有料」のテレビ・ラジオ広告については、投票日の14日前から禁止と定められているだけで、それより前に関する規定はありません。こうした問題とインターネットを活用した有料広告の制限、さらに投票結果への影響を防ぐための外国人寄付の規制などについて、付則で「とりあえず3年以内でどうするか決めるよう努力する」としたわけです。
憲法改正原案を国会発議するまでの流れは?
では、改正案が成立したら今後の憲法改正の見通しはどうなるのでしょうか。結論からいえば以前と状況に大差ありません。前述のように今回の主な改正内容は、改憲そのものや国民投票法の存在自体に反対という勢力を除けば、穏便なものですから。立憲民主党が盛り込ませた付則も努力目標に近く、それだけで国民投票を阻止することはできないでしょう。 仮に与党(自民・公明)と日本維新の会が憲法改正に「賛成」の立場だとすると、憲法改正原案を衆議院に提出することは議員100人以上の賛成で可能(※)ですから、すぐできます。本会議で趣旨説明や質疑をしたら、次に衆議院の憲法審査会(委員数50人)での審査が始まります。憲法審査会とは改憲案を審査するための常設機関で、ここでの質疑や公聴会を経て採決。現時点では賛成側が過半数なので可決できます。 そして本会議。ここでは「総議員の3分の2以上」の賛成で可決できます。衆議院は現時点で賛成側は3分の2を保持しているため、衆議院を通過して憲法改正原案は参議院へ。 参議院でも衆議院と同じ過程を経ます。参議院の憲法審査会(委員数45人)で議論した結果、可決されれば本会議へ。参議院で賛成側は過半数を占めるものの、3分の2には届かないため、ここで否決される可能性があります。両院それぞれの「総議員3分の2以上の賛成」がないと国会としての憲法改正発議(国民への提案)にならないので、どちらかの院で否決されれば国民投票法の出番はありません。 (※)…参議院の場合は議員50人以上の賛成で憲法改正原案を提出できる。参議院が先議の場合は参議院で可決した後、衆議院に改憲原案を送付する。両院で可決された時点で国会は憲法改正を発議したものとみなされる。