<独占インタビュー>西武の山川穂高が狙う「無敵4番」と「全打席本塁打」
1時間に1本ほどしかダイヤにない1両編成のローカル列車に揺られて本州の南へ。途中、草木が列車にバチバチとぶつかる物騒な列車は、およそ1時間半をかけてカツオの1本釣りで有名な駅員一人の南郷駅に到着した。宮崎県日南市南郷町。とてものどかな港町の高台にある南郷スタジアムで埼玉西武ライオンズは、CSファイナルステージに向けて、その刃が鈍らぬよう調整を続けていた。 若き4番打者は快音を連発している。調整出場したフェニックス・リーグでも本塁打の予行演習。47本塁打のタイトルホルダーのバットは、まだ熱を持ったままだ。 バックネット裏にある「監督、コーチ室」を借りて山川穂高と向かい合った。 今年の素晴らしい成績の理由は? 山川は即答した。 「試合に出れたからです。それが一番」 そして続けた。 「試合に出たり、出なかったりの選手が出ることを保証されるという立場になるのは難しいんです。でも去年の後半に首脳陣の信頼を勝ち取ることができたのが要因です。だから、今年は開幕を前に不安より期待の方が大きかったんです。試合に出るためにどうすればいいかを考えていた時間を試合に出て打つための時間に変えることができた。考え方が変わり、トータルとしての練習ができるようになったところが大きな違いです」 昨年の前半までの3年半は、1軍と2軍をエスカレーター。 「打てなきゃ終わり」の危機感は、しらずしらずのうちに山川のバッティングを小さくしていた。あれこれと悩み、いつのまにか、ホームランが打てなくなった。そして2軍落ち……負のスパイラルに迷い込んだ。 「2軍に戻ると、その場所では自分のやりたいようにできるんです。この状況をどうにか1軍でも作れないか、とずっと考えていました。そのためには結果を出し続けるしかない。結果を出し続けるには、自分のバッティングをするしかない。プロを5年間、経験した中 で、わかったことなんです。あの打席の中では誰も助けてくれないし、誰も責任を取ってくれない、すべての責任は自分なんです。じゃあ、やりたいようにやろう。結果が出れば自分。出なくても自分。そう思った方がいい、と考えるようになったんです」 だからホームランにこだわった。 だから「全打席、全試合ホームランを狙っている」と公言もする。山川のインタビューが掲載された雑誌などの媒体に目を通すと彼の言葉に遠慮はない。 全打席ホームラン発言の真意を問う。 「正直に言っているだけなんです」 山川は、「チームのためにヒット狙いがホームランになりました」「犠牲フライ狙いがホームランになりました」という“プロ野球あるある”とも言える定型コメントを否定する。 「自分のために打っているんです。自分のためにやっているから言い訳をしない。チームバッティングが頭にくると、打てなかったときに“チームのためだから仕方がない”と、言い訳ができるんです。だから、それは言いたくない。自分のために打てたか、打てないか。それで勝ったか、負けたか、は後からついてくるもの。でもホームランを打ったら絶対に勝てると思っている。自分のためにやっているから努力する。チームバッティングは考えていないんです」