<独占インタビュー>西武の山川穂高が狙う「無敵4番」と「全打席本塁打」
豪快な地鳴りがしそうなフルスイングが代名詞である。左足を大きく上げてタイミングを取る独特の1本足打法。 しばし、理論家の山川とフルスイング談義。 バットはどこで振る? 「手首です」 意外な返答だった。下半身だと想像していたからだ。 「スイングスピードは手首。それを加速し、ぶれないようにするのが足。足が固まって手が出てくるんです。足が強くないと 話になりません 」 なるほど。その手首でスイングスピードを増す感覚とは? 「手首を投げる感じです。ボールを投げる時と同じくポーンと」 山川は手首の使い方を実戦して見せてくれた。 筆者は評論家の里崎智也氏から聞いた以下の山川評を彼にぶつけた。 「キャッチャーが嫌なのは山川みたいにフルスイングするバッターなんです。ひとつ間違えば、という恐怖がピッチャーのミスを誘うんです。山川の良さはフルスイングと変化球で崩されても振ることじゃないですか」 すると山川は、また意外なフルスイングの秘密を明かした。 「基本的に全部マックスで振れるところでボールを待っていて、ストレートが来たときは、振らなくていい んです。ポンと合わせるだけ。それで飛びます。ここで、あまりに大振りしてミスショットすることはもったいないんです。本当のフルスイングをするのは、変化球でタイミングが外れたときだけ。思っても見なかったボールが来たときに体の反応でマックスで振れるか、 どうか、そこを意識しているんです」 本当のフルスイングは崩されたときだけだったのだ。 「変化球に対して、前(のポイント)で振るなら、そこへ向かいながら、思い切り振る。振り切れば、多少詰まっても、どこかに落ちてくれますし、バットの先でもホームランになります。変化球で抜かれて、ポンとバットだけを出して打つのは、最後の手段。これが全打席ホームラン狙うってことなんです」 今季ミスショットが減った理由がわかった。 1年間、4番を打った。10年ぶりにリーグ優勝した西武の4番である。 山川が追い求める「4番」の定義とは何か。 「無敵です」 無敵? そう聞き直すと、山川は偉大なる3冠王の名前を出した。 「落合さんの成績を出したいんです。打率.367、52本塁打、146打点。しかも、130試合の時代です。四球も100個くらい取っていて(正確には101個)、長打率は7割を超え、三振は40個しかありません。ホームラン数より少ないんです。これこそ無敵の数字です。そうなりたいんです」 生涯に3度の3冠王を獲得した“孤高のバットマン”落合博満氏がロッテ時代の1985年に残した特別な数字を暗記していた。 「ホームランか、三振か、みたいなのも見る人から見れば、4番らしいかもしれませんが、三振138個は嫌ですね。一個もしたくない。山川には“まじで投げるところがない”“誰も抑えられない”と言われるようになりたいんです。そう言われるための練習をしています。2軍時代は、そうでしたから。なれると思うんですよ」