初招集のU-18日本代表でも貫くのはアグレッシブな姿勢。クラセン連覇も経験したMF天野悠斗(G大阪ユース)が過ごす飛躍の夏
[8.23 SBS杯 静岡ユース 0-0(PK3-5) U-18日本代表 愛鷹] 夏の全国連覇を手土産に、飛び込んだ初めての年代別代表。もちろん周囲のレベルが高いことは間違いないけれど、自分だってやれないことはない。このチームのために、果たせる役割は絶対にある。攻めて、守って、走って、戦う。その上で、明確な結果も手にしてみせる。 【写真】「可愛すぎて悶絶」「金メダル」「新しいジャケ写かと」大物歌手が日本代表ユニ姿を披露 「このチームで何日間か練習してきたことで、チームのコンセプトも、チームが目指しているところも把握できてきたので、まずはチームのためにというのが第一優先ですけど、自分がその一員として自信を持って戦えるように、結果というところも求めています」。 若き青黒軍団がクラブユース選手権で掴んだ日本一に、主力として貢献した切れ味鋭いアタッカ―。MF天野悠斗(ガンバ大阪ユース、3年)はU-18日本代表の中でも攻撃で唯一無二の違いを生み出すべく、自分自身にできることをしっかりと見つめ直している。 理解はしていたけれど、悔しい想いは拭えなかった。「2024 SBSカップ国際ユースサッカー」1日目のU-18韓国代表戦は、激しい雨が降り続く中で行われることに。ベンチスタートだった天野には最後まで声が掛からず、この試合での代表デビューはお預けとなった。 「ああいう天候で、自分が使われにくいということはわかっていたんですけど、やっぱり試合に出られなかったことは悔しかったので、次は出たら、まずは走って、守備でもゴールを奪うことでも、チームに貢献することは意識していました」。改めて自分の中で気持ちを整え直すと、迎えた2日目の静岡ユース(静岡県選抜)戦のスタメンリストには、天野の名前が書き込まれる。 ただ、「主導権を握られて、守備がなかなかハマらず、苦しい展開だったなという印象ですね」と天野も振り返ったように、前半からペースを掴んだのは静岡ユース。U-18日本代表は押し込まれる時間が長く、劣勢の展開を強いられていく。 17番は考えていた。どうすればチームがうまく回るか。どうすれば自分はそれに関われるか。「優先順位として、最終的にはゴールに一番近い場所で自分が関われればいいかなという想いでやっているので、そこから逆算して自分がボールをどこで受けるかというところで、サイドに張るとか、中に入るとか、そういうことを考えながらやっていました」。時にはタッチラインいっぱいに開いて、時には中央のギャップに潜って、攻撃のリズム創出に奔走する。 とりわけ後半は左サイドで縦関係になったDF布施克真(日大藤沢高、3年)の立ち位置を把握しながら、積極的な仕掛けでチームの攻撃を活性化させるようなプレーが増加していったが、それだけで満足するようなマインドは持ち合わせていない。 「特に後半は僕が中に入ったら、サイドバックがワイドでフリーで受けられるので、そこから自分がどう関わるかというのは意識していましたし、そこからチャンスも作れていたと思うんですけど、やっぱり『点を決めたかった』というのが正直なところですね」(天野)。80分間では決着付かず。最後はPK戦の末に勝利を収めたものの、個人で得点を奪い切れなかった部分には、まだまだ成長の余地を感じていたようだ。 率直に言って、今回のU-18日本代表の招集を受けることは、ほとんど想定していなかった。「メチャメチャビックリしました。『まさか自分が?』って感じでしたね。『代表なんてまだまだ遠い存在だな』と思っていたので、選ばれたのはビックリしましたけど、ここで結果を出さないと意味がないので、『やってやろう』という気持ちは持っていますね」。 このチームでの練習を経験し、代表のユニフォームにも袖を通し、実際に試合のピッチにも立った今、天野の中には新しい感情が生まれているという。「やっぱり気分は上がります。『自分が日本代表の18人に入っているんだ』と考えると、やらないといけないという気持ちにもなりますし、気持ちが高まりますね」。責任感と高揚感を味わいつつ、もっとやれるはずだと自分自身を鼓舞し続けている。 全国から強豪が集う夏のクラブユース選手権。天野は2年時だった昨年の大会でもスタメンを勝ち獲り、優勝の一翼を担ったが、自分の中ではモヤモヤした想いを抱えていたという。「去年の大会は正直に言うと何もできなくて、『試合に出ていたのに不甲斐ないプレーしかできなかったな』と自分では思っていたので、今年はより結果で示したいという想いでやっていました」。 連覇を目指して戦った今年の大会では、その勝負強さが際立った。グループステージを突破して挑んだ準々決勝。浦和レッズユースとの一戦では、60分に貴重な決勝ゴールを叩き出し、チームも1-0で勝利。勢いそのままに臨んだ準決勝の名古屋グランパスU-18戦でも、後半に入って先制ゴールを奪い、チームを決勝へと導いてみせる。 「準々決勝と準決勝でゴールを決めてノッていたので、決勝でも決めたい想いはありましたけど、チームのためにプレーできて、結果も優勝できたので、そこは良かったかなと思っています」。1年前とは違い、確かな自身の結果を残した上で手にした日本一。その先で初となる年代別代表招集を受けたのだから、今年の夏が飛躍の時間になったことに疑いの余地はない。 準決勝の得点後には印象的なパフォーマンスも飛び出した。「僕はアーセナルをよく見ているんですけど、アレをトロサール選手がやっていて、自分もやりたいなと。『あのパフォーマンスを主流にしたいな』と思っていた中で、ゴールを決められたので、やってみたという感じです」。 そのパフォーマンスをより浸透させる意味でも、代表戦はアピールのための格好の舞台。大会最終日のU-18アルゼンチン代表戦では、「次の試合でも決めたらやりたいですね」と笑った天野の“得点後”からも、目を離すわけにはいかない。 とはいえ、まずは試合に出場する権利を手繰り寄せた上で、チームの結果に全力で貢献しようというマインドには、いさかかのブレもない。「まだアルゼンチン戦に自分が出られるかどうかはわからないですけど、出た時に何をするかということは明確で、まずはチームのために戦いたいですし、その中で個人の結果を求めてやっていきたいなと思っています」。 繰り出す1つ1つのプレーに持ち前の強気なメンタルを滲ませる、ガンバのアカデミーが育んだアグレッシブなアタッカー。天野悠斗は何よりもチームの結果を意識しながら、ゴールという結果も追い求めることで、自身の価値を高め続けていく。 (取材・文 土屋雅史)