専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ
──不安をもてばきりがありませんが、どの程度恐れるのがよいのでしょうか。 いま日本の街中ですれ違って感染する確率は非常に低い。武漢とは違い、感染者が多くの地域にいる可能性はまだ非常に低いからです。けれども医療現場は違います。いま日本国内でリスクがもっとも高い場所です。 政府は目安となる指針を出しています。 37.5度以上の発熱が続き、強いだるさ、息苦しさが4日以上続いた場合、相談センターに連絡するとなっています(高齢者、糖尿病など持病がある人は2日以上)。まずはそこまで様子を見ることが大事です。 2009年の新型インフルエンザの時には、外来で3時間待ちや4時間待ちもありました。けれども、検査してもらえるし、薬を処方してもらうこともできる。でも、新型コロナウイルスは軽症者に対しては薬もないし、治療法もない。検査もなかなかしてもらえない。 もちろん、重症化の兆候がある人には最善の医療を提供する必要があります。医療現場ではそのような体制を迅速に整備しようとしています。重症化する徴候のある人に最大限の医療を提供するためにも、また自分が感染しないためにも、軽症者や過剰に心配に感じる人が医療機関に押しかけるような行動はすべきではありません。
押谷仁(おしたに・ひとし)
東北大学大学院教授。1999年から2006年まで世界保健機構(WHO)西太平洋地域事務局に感染症対策アドバイザーとして勤務。02年から03年にかけて中国を中心に広がったSARSの事態収拾への陣頭指揮を取り、収束させた経験を持つ。今回は2月14日から、内閣官房・新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の一員として助言をする立場となっている。
河合香織(かわい・かおり)
1974年生まれ。神戸市外国語大学卒業。2009年、『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で第16回小学館ノンフィクション大賞受賞。『選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子』で2019年、第50回大宅壮一ノンフィクション賞、第18回新潮ドキュメント賞受賞。