専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ
──病院に行っても重症者以外は受け付けないと政府も発表しました。 はい。日本でも「クラスター」(感染者の集団)が増えて感染拡大すると、病院はかなり厳しい状態になります。つまり、病床や医師などが不足して、助けられる命も、助けられないことになるのです。武漢でも本来なら助けられたのに、感染者の急増で医療資源が足りなくなり、命を落としたケースが多いと考えられます。 実際、ウイルスに感染していることがわかっても、軽症者に対する治療は残念ながら現在は何もありません。重症者に対しては人工呼吸器などの集中治療を行う、あるいは試験的な薬を投与するなど方策はありますが、軽症者に投与することは現状ではできません。そして、軽症者が病院に来ても検査のキャパシティは超えつつあり、今の段階では検査できません。つまり、軽症者が病院に来ても、打てる手がないのです。
──クラスターとは具体的にどんな場所で起きるのでしょうか。たとえば、学校が心配されています。 学校でクラスターが発生しないとは断言はできませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです。一斉の学校閉鎖をすることは、全体の流れからするとあまり意味がない。大人が子供にうつす例はありますが、インフルエンザのように子供が流行の大きな原因になることは少ないことがわかっているからです。
クルーズ船状態が日本のどこかで起きる可能性
──感染が起きやすい行動とはどういうものでしょうか。 対面で人と人の距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境です。たとえば立食パーティーや飲み会などはリスクが高い。ほかにもいろんな形があると思いますが、こういう中に感染者がいたら危ない。その人にはっきりとした症状がなくても、感染が広がる可能性があります。 僕の理解では、クルーズ船はメガ屋形船です。多くの人が触れあう機会が非常に多い。だから、数百人の感染という大規模なクラスター連鎖(メガクラスター化)が起きたのだと思っています。今、屋形船のようなクラスターを潰していこうと考えていますが、クラスターの元を断つ努力を皆がしないと、なすすべがなくなります。 ──検査を受けられないという不安も耳にします。早く治療しないから重症になると考える人もいます。 今は軽症者も病院に隔離目的で収容していますが、もうできなくなりつつあります。クラスター連鎖やメガクラスターが起こると感染拡大を制御することが非常に難しくなります。クルーズ船のような状態が、日本のどこかで起きてしまったら感染拡大を止めることは困難になります。韓国では、そのようなことが実際に起きてしまった可能性があります。 今の日本で、一番メガクラスターが起こると考えられる場所は病院です。待合室で多くの人が長時間滞在するのは、感染の可能性を非常に高いものにします。日本ではまだ全体の中で感染している人は非常に少なく、体調不良で診てもらいたい、あるいは心配だから診てもらいたいという人の99.99%以上は、このウイルスには感染していないと考えられます。しかし、医療機関には、残りのわずかの割合で存在する本当の感染者がいるかもしれない。武漢のように多くの人が待合室の中で押し合いへし合いの状況になると、メガクラスターが起こる可能性があります。