専門家会議メンバーが明かす、新型コロナの「正体」と今後のシナリオ
非常に高かった「感染性」
──2003年に広がったSARSと今回の新型コロナウイルスでは、どんな違いがありますか。 SARSでは感染者の多くが重症のウイルス性肺炎を起こし、致死率が10%ぐらいでした。新型コロナウイルスは現在、致死率は2.3%程度ですが、もっと低い可能性が高いと思います。感染した人が重症化する率はSARSに比べると少ない。ただし、感染性が非常に高く、むしろ重症者が少ないことが感染連鎖を見えにくくしています。そのため、ある程度感染が拡がらないと感染連鎖が見えず、各国の水面下で感染が拡がっていると考えられます。重症化する率は低くても、非常に広範囲に感染しており、その母数が増えた分、新型コロナウイルスでの死亡者数はSARSより圧倒的に多くなっています。新型コロナウイルスはSARSコロナウイルスと遺伝子配列は似ていますが、「病原性」と「感染性」は全く違います。
──感染力に違いがあるのはなぜでしょうか。 SARSは下気道(気道の下部)、つまり肺でしか増えなかったのですが、新型コロナウイルスは肺でも増えるし、上気道(気道の上部)、つまり喉のあたりでも増えます。上気道でウイルスが増えた場合、症状は軽いけれど、喉のあたりでウイルスがたくさんあるから、簡単に感染が起きてしまいます。飛沫感染や接触感染が主体だと考えられますが、例外的に咳やくしゃみのない人から会話などで人に感染させてしまう可能性が否定できません。ここが厄介なのです。 ──SARSのときのように封じ込めはできないのでしょうか。 短期的には無理だと思われます。SARSは感染者が中国を中心に、世界で8056人でした。新型コロナウイルスは、もうどのくらいなのか、本当の感染者数は把握できなくなっています。少なく見積もっても数十万人。そこまで広まったウイルスの感染連鎖を見つけて、全部潰すことは非常に困難です。
クルーズ船の影響で受け入れが難しい医療機関
──日本では目下、感染者が増え続けています。どうすればよいでしょう。 まず我々がすべきことは、自分が感染しないかではなく、いかに人に感染させないかです。 国内では2月13日に感染者が見つかりました。本来は、そこから徐々に増える感染者に対応していけばよかったのですが、クルーズ船の感染者を一気に医療機関で抱えてしまったことで、今はもう、東京都内の大きな医療機関は受け入れが難しい状態になっています。