〈ハミルトン〉と潜水艦の話。
ポップなイエローが眩しい〈ハミルトン〉の「カーキ ネイビー ビロウゼロ」を眺めていたら、ザ・ビートルズの「イエローサブマリン」が脳内再生された。中毒性の高い歌詞を口ずさんでいると、ふと疑問が天から舞い降りる。「黄色の潜水艦なんてあるの?」。もちろん、そんな潜水艦は世界中どこを探してもない。あれは、当時のサイケブームにあやかって色を決めたと見る向きが強いが、潜水艦内部の備品に、視認性を高めるべく黄色を採用していたという事実はあるようだ。何を隠そう、この時計のカラーリングはそんな逸話から生まれた。大きなビスが四隅にあしらわれた重厚なケースデザインも潜水艦にインスパイアされたものだが、それに加え、ダイバーズウォッチも真っ青な1000m防水に、深海潜水時にものをいうヘリウムエスケープバルブまで備えているから恐れ入る。そんな技術の粋を結集した最強モデルは、やはりSF映画との繋がりももちろんある。『TENET テネット』の劇中、クライマックスの「挟撃作戦」で核となる一本なのだ。そんな時も水圧も物ともしない今作は深遠なるロマンに溢れる。 〈HAMILTON〉KHAKI NAVY BELOWZERO
クリストファー・ノーラン
アカデミー賞7冠に輝いた『オッペンハイマー』をはじめ、『インターステラー』『ダンケルク』など、時が鍵を握る映像を手掛けてきた映画監督。本人も大の時計好きで、〈ハミルトン〉や〈ジャガー・ルクルト〉を愛用する。次回作ではどんな時計が登場するのか楽しみ。
インフォメーション
〈HAMILTON〉KHAKI NAVY BELOWZERO 映画『TENET テネット』公開後の2020年に発表された「カーキ ネイビー ビロウゼロ」がイエローバンドに。0時のアワーマーカーに、ダイビングマスクがエンボスされたケースバックも見逃せないポイントだ。一見謎めいたディテールもノーラン作品に通ずる気がする。ケース径46㎜、自動巻き、チタニウム製。¥269,500(ハミルトン/スウォッチ グループ ジャパン☎03・6254・7371) photo: Ryohei Ambo, styling: Kazuro Sanbon, grooming: Risa Fukushima, edit: Koji Toyoda(2024年7月 927号初出)
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