山で料理する派が選ぶべきクッカー「MSR/セラミック ソロポット」|これからの山道具図鑑 Vol.2
ギア選びからその使い方が広がることも
これらのポイントをMSR/セラミックソロポットはすべて満たしている。でも、ほかにも5つ以上を見たし、軽さに長けたクッカーもある。 例えばSOTO/チタンポット1100は、UL仕様のため着脱式のハンドル(リフター)は小さめだけれども、重量112gと驚きの軽さを実現している。チタン製なので、ラーメンをクッカーから直接食べる際、唇を火傷する可能性も低い。とはいえ、レンゲやスプーンでスープを掬って飲めばアルミ製でも問題にならないので、ラーメン用クッカー選びのポイントに、本体素材の違いは入れなかった。 鍋ではなく、フライパンのエバニュー/U。L。 Alu。Pan 18cmも、おもしろい。重量150gと軽量。高さはフライパンなので5cmしかないが、煮炊きに問題ない。フライパンなので焼くことも得意。餃子とビールを楽しんでから、〆のラーメンなんていうぜいたくもできるだろう。 と、想像したけれども、コゲつき防止加工が施されていれば、直径の大きなフライパンよりも数は少ないが、浅型クッカーでも餃子は焼ける。 そうか、そんな使い方もあったか! と、ギア選びをあれこれ考えていると、発見、固定観念の払拭ができることがあって、楽しい。まだラーメン&餃子は山で試していないので、次回やってみたい!
コゲつき防止加工について
炒め物調理で機能するコゲつき防止加工が施されたクッカーを使う際には注意点があるので、お知らせしておきたい。 気にしている人が少ないように感じるけれども、コゲつき防止加工は強火に弱い。施されたコーティングは、強火だと劣化しやすい。だから、火力は中火以下がマスト。強火で使っていて、すぐにコゲつくようになった……というのは、クッカーやコゲつき防止加工の性能の問題ではなく、使い方を間違えている場合が案外多い。 もし、火力調節が上手くできないバーナーを所有していたとしたら、クッカーを新調すると同時に、バーナーも火力調節ができるものにすると、コゲつきを防げ、手間を省けるようになる。それに、そもそも中火がどれくらいなのかを確認していない人も多いように思うので、クッカーを乗せる前に、バーナーの火の加減をしっかり見ておくことをオススメする。 さて、そのコゲつき防止加工は、これまでフッ素コーティングが大多数を占めていた。けれども、欧米では、フッ素コーティングの使用に規制がされはじめている。 というのも、欧米各地の地下水や飲み水からフッ素コーティングに使われる有機フッ素化合物=PFASが、基準値以上含まれていることがわかってきたからだ。 日本でも今年から本格的な調査がはじまり、地下水や飲み水のPFAS汚染が多くあることがわかってきている。 PFASは発ガンリスクのある化学物質だが、フッ素コーティングされたクッカーやフライパンの使用で人体に悪影響を与える可能性はないようだ。 だが、それらを製造する工場の排水等が自然環境に影響を与えている可能性を否定できないというのが、欧米各国の見解。まだ確定したわけではないけれども、予防的措置としてPFAS規制がはじまっているのだ。 MSRは、そうした規制がはじまる2017年から、コゲつき防止加工にセラミックコーティングを採用している。コーティングの耐久性を重視してセラミックを採用したようだが、PFASの問題は最近はじまったのではなく、2000年ごろから議論がはじまっていたので、モノづくりの意識が高い同社であれば、やはり自然環境の保護も、ある程度念頭に置いて採用したように感じられる。 また現時点で日本では規制されていないけれども、山で遊び、ときに挑戦し、豊かな時間をすごさせてもらっている登山好きであれば、自然環境への影響が少ないモノを選択することは、積極的に行なっていきたいところだ。 それに欧米各国が予防的措置として、PFASの規制に動いていることも理解できる。それは登山での危機管理に似ているからだ。山での危機管理は、危険な状況に陥ってから対処する方法よりも、危険な目に遭わない方法を身に付けておくほうが大切だ。早めの判断。危険を回避する能力。私は山でそれを学んでいる。だから、より深刻な状況になりそうなことを回避して、新たな道を模索する考えを支持したい。 登山だけでなく、その道具選びでも、そして普段の暮らし方、生き方も、山で教わったことを活かしていきたいと思う。