デンマーク人が4時に帰れる理由とは? 「働きながら本を読める国」の思想
働きながら本を読める国
――デンマークでは、読書の文化はどれほど根づいているのでしょうか。 【針貝】国際的に比較すると、「働きながら本を読めている国」だと言えます。上田修一氏の論文「どのような大人が本を読んでいるのか~OECD 国際成人力調査のオープンデータに基づく多国間調査~」(2019年)によれば、「仕事外で小説やノンフィクションの本を毎日読む」大人の割合は、デンマークは28.9%で対象国のなかで3位、日本は10.0%で26位でした。 デンマークではとくに長編小説やミステリーがよく読まれています。日本の作家さんでは村上春樹さんが人気で、講演会のチケットが一瞬で売り切れになるほどです。文学への関心が高く、村田沙耶香さん、多和田葉子さんのイベントが首都コペンハーゲンから遠く離れた島で開催されたときも、会場が満席で驚きました。 【三宅】デンマーク人が「働きながら本を読めている」背景には、今日お話しした働き方や人生の優先順位のつけ方があるのかもしれません。時間もそうですが、心のゆとりがないと、ゆっくり読書をすることは難しいですから。 【針貝】人生のなかで自分が何を大切にするのかを見極めれば、優先順位は自ずとつけられるはずです。仕事においても、業務に取りかかる前に「この仕事は本当に必要なのか?」と問いかけてみることが大事でしょう。 【三宅】私も肝に銘じたいです! 【針貝】それでも「この仕事いらなくないですか?」とはなかなか提案しにくいでしょうから、まずは「定時で帰る」を実践して、「定時で帰るキャラ」を確立するのは良いかもしれません。プライベートのグループチャットでは「即レスしないキャラ」を確立することもおすすめしたいですね。
針貝有佳(デンマーク文化研究家),三宅香帆(文芸評論家)