IT専門家として1日で最大10番組にも出演する三上洋さんが28年ぶりの単独著書を刊行!
――また無職となってしまった三上さんは、どんな生活を? 三上 すぐに雑誌時代の同僚から新しい仕事を紹介されました。そこでは「これからはウイルス対策が必須!」といった感じで、コンピューターウイルスの危険性、その対策を記事にしていました。 ただ、その雑誌もすぐ廃刊し、その後に読売新聞オンラインで『サイバー護身術』というネットセキュリティに関する連載を担当したんです。それで気づいたら"ネットセキュリティに強い三上洋"ってなっちゃった。これまでアングラなことばっかやってたのにね(笑)。 ――三上さんがメディアに出るようになったきっかけは? 三上 セキュリティの連載を始め、肩書を「ITジャーナリスト」にしてからですね。それまで、ITジャーナリストは津田大介さんが使ってたんですが、ある時期からそれがなくなり、「空いてるじゃん!」と私もITジャーナリストと名乗るようになりました。 それよりも私の場合は、SNSに自分の電話番号を表示していますから、頼みやすいんでしょうね(笑)。 メディアに出るようになった当初は「◯◯さんが捕まらないので、その控えでお願いします!」という代打でした。そんな電話が朝の4時にかかってくるし、普通ならキレてもいい話ですけど。 制作会社でADの経験があるから電話してきたADさんの切羽詰まった状況も十分に知っています。何よりテレビが大好きなので断る理由がないんですよね。 ――三上さんがメディア出演で必ず行なうことはありますか? 三上 とにかく、番組内で物事を簡単に説明でき、パネル制作にも使えるようにディレクターさんにメモを送ります。例えば、マイナンバーカードのトラブルなら、その経緯から問題点、そして解決策をまとめたメモなどですね。 テレビやラジオの生放送番組のほとんどは、IT専門のディレクターがいません。なので、どんな人間が読んでも即理解できるメモにしています。 実は、このメモを重宝してくれるディレクターさんたちから「三上さん、これ本にすればいいじゃん!」と言われたのが、本書出版のきっかけでもあります。 ――現在、日本では地震や台風など自然災害が頻発中。こういった状況で最新のIT技術はどう役立つと思いますか? 三上 2011年の東日本大震災では、当時ブームだったライブ動画配信「Ustream」が大きな力になりました。実はこのとき、ある中学生がテレビの生放送を勝手にスマホでライブ中継し、テレビがない人に情報を伝えていました。 当然違法なのですがUstreamの運営側が緊急事態であることから黙認し、その後に各テレビ局に根回しをして「公式のテレビ・ネット同時配信」を実現させたのです。 人命に関わる緊急事態であれば、ネットとメディアは柔軟に対応できることを証明したといえます。このフットワークの軽さと柔軟性が、災害大国の日本で重要なことだと思います。 ――最後に今後、チャレンジしたい仕事などは? 三上 実は私、コンサートに行くほど乃木坂46のファンでして、それに関するコメント取材も、お待ちしています(笑)。ノーギャラで構いません! ■三上 洋(みかみ・よう) 1965年生まれ、東京都出身。ITジャーナリスト。早朝からラジオ、テレビ、さらにはネットまで帯番組を横断してIT関連の事件や生成AIからマイナンバーカードまで解説している。高校生のときからライターとしてラジオや無線などの専門誌で記事を制作し、大学卒業後にそのまま出版業界に就職するかと思いきや、テレビ制作会社に勤務することに ■『深掘り! IT時事ニュース――読み方・基本が面白いほどよくわかる本』 技術評論社 1870円(税込) 近年、急成長する生成AIの技術とその問題点。SNSが炎上する仕組み、各種サイバー犯罪の最新手口。わかっているつもりで使っているIT用語などなど。テレビの解説者としておなじみの三上洋さんが、イラスト多めにわかりやすく解説。パソコン専門書籍の老舗である技術評論社から出版された28年ぶりとなる単独著書が登場! IT時事のニュースの読み方を知りたい人、IT時事のニュースについていけないと感じている人にオススメの一冊 取材・文/直井裕太