ウクライナで軍務につく女性が急増中も悩みは「女性用の軍服がないこと」、サポートするNGOの現場を取材
戦争が続くウクライナでは多くの女性が軍務についている。ロシアによるウクライナへの全面侵攻以降、その数は急増した。軍関係の役所で働く人はもちろんのこと、前線地帯で兵士として戦う女性も増えている。戦地で女性たちが直面する課題とはなんだろうか。東部前線で見た女性兵士の姿と、女性団体「ヴェテランカ」の活動から、現状を読み解きたい。 【写真】ウクライナ東部のミリタリーショップ。兵士が自腹で制服や装備品を調達することも珍しくない ■ 東部前線地帯で見た女性軍人の状況 戦場での女性軍人の話は度々聞いていた。筆者も以前の前線取材で女性の兵士を見かけたことがあった。それでは、実際にどれくらいの女性がこの戦時下でどのように軍務についているのだろうか? 公式情報を確認しようと思ったが、戦時中のため、軍に関する情報は制限されている。さらに、情勢は極めて流動的であり、正確な数字を把握することはできない。確かなのはこの約3年でその割合は増え続けていることだ。 2024年9月にウクライナ国防省に掲載された記事に軍務につく女性の数について取り上げたものがあった。これによれば、軍務についている女性軍人は4万8000人、前線で戦っている女性兵は約5000人だという。数字については参考程度とするほうがよいだろう。ボランティアや志願兵など様々な形で活動する人も多い。このため、実際の数はもっと多いだろう。現在では約20%が女性だ、と関係者は話してくれた。 2024年11月、東部前線地帯で取材中にも女性軍人の姿は何度も目にした。具体的には、医療チーム、ドローン部隊の兵士や広報官、軍の映像の記録部隊などである。 特に前線で活動する医療チームには女性が多いようだった。私が会った人は、負傷した兵士を現場から救出し、最低限の医療処置を施す任務に従事していた。その後、近隣の病院へと搬送する部隊に引き渡すのだという。つまり、医療チームとはいえほぼ最前線の戦場で任務に就いている。 この医療チームや広報などの軍務につく女性に話を聞いた。意外にも、「女性であることによる苦労はない」という答えが返ってきた。「自分ができることをやるだけだ」と言う。「このような戦時下では、男だから、女だから、と言っている余裕はない」と語ってくれた。