すでに複数の分野で米軍を凌駕する「中国の軍事力」と「その弱点」─もはや米軍に余裕はない
米中関係が緊迫するなか、中国の人民解放軍がすさまじいスピードで現代化を遂げている。彼らは具体的にどの分野に秀でており、どんな技術を持ち合わせているのか。英誌「エコノミスト」がその驚異的な進歩を報じている。 【画像】すでに複数の分野で米軍を凌駕する「中国の軍事力」と「その弱点」
飛躍的な成長
ドナルド・トランプは2期目に向けて準備を進めるなかで、米国の18の情報機関すべてから共通のシンプルなメッセージを受け取ることになるだろう。 それは、「欧州ではロシアが混乱を引き起こしているかもしれないが、世界規模の挑戦を仕掛けるられるのは中国だけだ」というものだ。米情報機関を統括する国家情報長官室は2023年、「中国政府は重要な能力の開発を加速させている」との見解を示した。 さらに同機関は、その「能力」について、中国政府が「米国との大規模かつ持続的な紛争に対処するために、人民解放軍(PLA)に必要だと判断している」ものだと伝えている。 現状の人民解放軍は、米国との戦争に踏み切るには依然として力不足だ。中国は2035年までに軍の「現代化」を達成し、2049年までに世界最高水準の軍隊を目指すと公式に表明している。 だが、人民解放軍はすでに目覚ましい変貌を遂げており、20年前の装備不充分な軍隊から、いまやアジア随一の軍事大国へと成長した。質より量を重視するという中国軍の旧来のイメージは、もはや時代遅れとなった。 近年、中国は軍事力の実効性を著しく向上させ、一部の分野ではすでに米国と互角か、それを凌駕する水準に達している。
米国にはない技術
中国の軍事的優位性を分析するうえで、まず注目すべきは海軍、人民解放軍海軍(PLAN)だ。PLANは世界最大規模の海軍であると同時に、最新鋭の艦艇を擁している。 米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)によると、中国の軍艦の約70%が2010年以降に建造された最新戦艦であるのに対し、米海軍のそれは25%に過ぎない。米海軍情報局によれば、設計や材質の面で、中国の艦艇の多くはすでに米国と肩を並べるという。 米国の軍艦のほうが概して大型で高性能ではあるが、中国も急速に追い上げている。海軍力を測る重要な指標の一つが、垂直発射システム(VLS)セル、つまり先進的なミサイル発射装置の数だ。CSISの推計によると、2004年時点で米国艦艇1隻あたりのVLSセルの数は中国の約222倍だったが、この比率は間もなくPLANの優位に転じる見込みだ。 中国は技術革新の面でも際立っている。米海軍の元将校であるトム・シュガートによれば、中国の周級潜水艦が採用するハイブリッド推進システムに匹敵するものは、米国には存在しないという。さらに彼は建造中の強襲揚陸艦076型に言及し、世界最大級かつドローン発進用カタパルトを備えた唯一の強襲揚陸艦になると指摘する。