ウクライナで軍務につく女性が急増中も悩みは「女性用の軍服がないこと」、サポートするNGOの現場を取材
しかし、ドローン部隊で兵士として作戦にも参加している女性は違った。「とにかく、始めは何もかもが大変だった」と険しい表情で言った。前線に近づけば近づくほど、任務中の環境は厳しくなる。作戦中のトイレや着替えなどの不便はもちろんあるという。それに加えて、基地でも「女性」として扱われ、「兵士」とは見なされなかった、という。 任務によって、かなり状況は異なるようだ。 ■ 「ヴェテランカ」の活動 2024年11月、筆者は友人の紹介で、首都キーウにあるNGO「ヴェテランカ」を訪問した。ヴェテランとは日本語と同じように十分な経験を持った人という意味もあるが、退役兵の意味もある。ヴェテランカの意味は退役女性軍人となる。退役した女性軍人によって運営されている組織なのだ。 オフィスを訪問すると、まず目に入ったのは広々とした空間に置かれたたくさんのビーズクッション。そして、自由に歩く犬の姿だった。事務室や代表者の部屋などの個室に入ると、いい匂いがする。 軍関係の組織とは思えないくらい居心地の良い雰囲気だった。オフィスの片隅には一口型のIHが置いてあり、スタッフが作ったスープなどを食べることができる。 戦時下で軍関係の人々の話を聞いていると心が殺伐としてくる。温かい手作りのスープが本当にありがたかった。
オフィスにはいくつかの作業室があった。戦場で使うカモフラージュ作り、ドローンの組み立て、支援物資の保管室、軍服づくりをする裁縫室、そして事務室などである。 「女性団体」と聞いていたので、女性の役割の重要性、現場で女性が働くことの難しさなどを強調されるのかな、と思った。しかし、スタッフからはそのような発言はほとんど聞かれなかった。スタッフたちは皆一様に口をそろえて言ったのは、次のようなことだった。 「10年続く戦争によって軍務につく女性が急速に増えた。しかし、状況や制度がこれに全く追いついていない。問題のほとんどは制度にある」 ■ ニーズが高い女性用の軍服 ヴェテランカが現在、積極的に取り組んでいるのは、女性用の軍服を作ることだという。 2023年8月にウクライナでは女性の軍人向けの服装規定が制定された。それまで、女性軍人について何の規定もなく、軍服などは男性と同じものが支給されていたという。 実際に軍服を作っている人に、「具体的に女性用は既存のものと何が違うのか?」と聞いてみた。すると「フィット感だ」と言う。 戦地では当然ながら厳しい環境の中で任務に就くことが多い。動きやすさ、快適性のために適正なサイズが求められる。冬季は寒さが厳しく、夏場は日差しが強く熱い。夏は蒸れにくく、乾きやすい、冬場は保温性の高い服が必要となる。