【大学野球】早大エース・伊藤樹が母校訪問 根底にある恩師からの教え…ドラフトイヤーにかける決意
託されたエースナンバー「11」
早大の151キロ右腕・伊藤樹(3年・仙台育英高)が後輩たちに「エース魂」を注入した。 【選手データ】伊藤樹 プロフィール・寸評 12月26日、母校グラウンドを訪問した。前日、夜行バスで東京から仙台入り。午前8時からトレーニングを積み、6年間活動した原点の場所で汗を流した。練習後、系列の秀光中、高校時代を通じて計5年、指導を受けた仙台育英高・須江航監督にあいさつ。伊藤は1年間の報告、2025年に迎える学生ラストシーズン、ドラフトイヤーへの決意を語った。 伊藤は今春、早大・小宮山悟監督からエースナンバー「11」が託された。指揮官の期待に応え、春3勝(0敗)、秋6勝(1敗)を挙げ、東京六大学リーグで9年ぶりの春秋連覇に貢献し、2季連続でベストナインを受賞した。秋は明大と勝ち点4の同率となり、優勝決定戦では圧巻の無四球の3安打完封。「勝てる投手」を証明した一方で、6月の全日本大学選手権、11月の明治神宮大会を通じて、チーム目標だった「日本一」には届かなかった。
「人生は敗者復活戦」。須江監督からの金言である。伊藤は秀光中時代に3年夏の全中決勝で森木大智(阪神)を擁する高知中に、延長11回の激闘の末に惜敗し準優勝。仙台育英高では1年夏の甲子園準々決勝(対星稜高)で聖地初登板(先発)も、2回途中5失点で降板した(チームは1対17で敗退)。3年春のセンバツでは8強進出に貢献したが、夏は宮城大会4回戦敗退。早大では1、2年とテーマを掲げながら過ごし、リーグ戦初勝利は2年秋。負けを通じて学習し、一つひとつの段階を踏んできた。自ら思考して、実践する須江監督からの教えが根底にある。 学生ラストイヤーはリーグ戦通算20勝を目指し(3年秋までに13勝)、チームを悲願の日本一へと導いた上で、早大入学時からの目標であるドラフト1位でのプロ入りを見据える。年末に母校に帰り、恩師からじっくりと膝を突き合わせて話を聞き、英気を養った。
後輩からの質問タイム
午後2時。授業を終えた部員たちが、グラウンドへやってきた。須江監督は投手陣を室内練習場に集合させると、伊藤への質問タイムが始まった。投手14人。1、2年生は競い合うように挙手。常日頃の食生活、トレーニング、制球力、ストレートの質向上、フォームの確立、ゲーム中に心がけていること……。約20分、自身の経験を下に丁寧に説明した。高校生にとっては、あこがれの大先輩であり、貴重な「生の声」を聞く場であった。 高校在学当時、伊藤はグラウンド一塁ベンチの掃除が担当だった。 「何も変わってないですね。あの頃と配置も同じで……。小学6年時、隣接する室内練習場で初めて、須江先生に投球を見ていただき、決意を持って(出身地の)秋田から仙台に出てきたんです。須江先生から誘われなかったら、今の自分はありません。高卒プロを目指していましたが、現実的に上位指名は厳しいと、大学進学の道筋をつけてくれたのも須江先生。早稲田の小宮山(小宮山悟)監督から常に求められている結果にこだわり、須江先生、後輩たちに良い刺激を与えられるように、1日1日の練習を重ねていきたいです」 仙台経由で、実家のある秋田で年末年始を過ごす。東京に戻った1月5日、活動拠点の安部球場で2025年の練習をスタートさせる。 文=岡本朋祐
週刊ベースボール