NVIDIAのファンCEOが断言「ロボットAI革命をリードするのは日本がふさわしい」
「AIエージェント」と「フィジカルAI」
ファン氏は、生成AIの登場などによって進化を続けるAIアプリケーションの有用な事例として「AIエージェント」と「フィジカルAI」を挙げた。 AIエージェントは、デジタルAIワーカーと呼び変えることもできるが、基本的にはこれまで人が行ってきた業務の多くを担ってくれる存在である。NVIDIAは、AIエージェントの処理に必要なトークンを発行するだけでなく、生成AIモデルの開発と展開を支援するフレームワークである「NVIDIA NeMo」なども提供している。NVIDIAは、Service NowなどのパートナーとともにAIエージェントを共同開発しており、今後これらのパートナーのソリューションを利用する際には、AIエージェントが利用できるようになっていく。 また、NVIDIAはAIエージェントのBlueprint(青写真、レファレンス)となるデジタルヒューマンのJamesを公開している。「AIエージェントは人の業務の50%をこなせるようになるだろう。これは人の50%と取って代わるのではなく、AIが仕事の100%の内50%分を担うことで、より生産性を高めてくれると考えるべきだ。AIが人の仕事を奪うのではなく、AIを活用する人が仕事を得ていくのであり、だからこそできるだけ早くAIを使い始めるべきだろう」(フアン氏)。 一方のフィジカルAIは、産業用ロボットのように限定環境で利用されているロボットの適用範囲をさらに拡大する。ファン氏は「日本メーカーは世界の産業用ロボットのシェアで50%を占めている。しかし、この産業用ロボットの市場は大きくは成長していない。市場を大きく成長させるためには、もっと柔軟でさまざまな環境への適応が可能なロボットが必要となる。その鍵になるのがフィジカルAIだ」と述べる。 フィジカルAIの実現には3つのコンピュータが必要になる。1つ目は、ロボットに組み込むAIモデルの学習を行うコンピュータだ。2つ目は、学習したAIモデルが実環境で正しく振る舞うことができるのかのテストを行うためのシミュレーションだ。NVIDIAは、デジタルツインに基づくこのシミュレーション環境となる「NVIDIA Omniverse」を提供している。そして、3つ目は、Omniverseでの検証を完了したAIモデルをロボットの中で効率良く実行するためのエッジAIシステムだ。 このフィジカルAIは、生成AIと高い演算処理能力を持つBlackwellの組み合わせによって、人型ロボットの実現が可能なレベルまで進化できる状況になっている。NVIDIAは、汎用人型ロボットの開発を可能にするプロジェクト「GR00T(読み方:グルート)」を進めているが、2024年11月には人型ロボットのAIモデル学習のワークフローを発表している。ファン氏は講演の中で、人の動きを生成して効率的に学習を行うための「GR00T-Mimic」や、Omniverseの中でロボットの周辺にさまざまな物体や環境を生成AIで作り出して学習する「GR00T-Gem」、人型ロボットの全身のバランス制御を行う「GR00T-Control」などを紹介した。 フアン氏は「フィジカルAIによるロボットのAI革命をリードする国として、ロボットが大好きな日本こそが最もふさわしい。最新のAIによるブレークスルーと、日本が持つ最先端のメカトロニクス技術を組み合わせることで、最大のチャンスをつかむことができる。NVIDIAとしてぜひ協力していきたい」と力を込める。