オノ・ヨーコ再考──財閥の令嬢はなぜアメリカを目指し、アーティストとなったのか
平和へのメッセージで再び注目を浴びる
ここ20年ほど、アーティストとしてのオノに再び注目が集まるようになっている。そして特に近年は、彼女がキャリアを通じて訴えてきた平和主義が前面に出た作品が多い。たとえば、《Helmets/Pieces of Sky(ヘルメット/空のかけら)》(2001)というインスタレーションでは、天井から吊り下げたいくつもの兵士のヘルメットの中に、青空のジグソーパズルのピースが収められていた。また、真っ白な地球儀やカンバスなどのオブジェを用い、鑑賞者に文字や絵を描いてもらう「Add Color(彩色せよ)」というシリーズを1961年に制作していたが、2016年に同シリーズの新しい作品を発表。現在テート・モダンで展示されている最新バージョンでは、シリア内戦によって引き起こされた難民危機を象徴する手漕ぎボートが使われている。 こうして、今また多くの人々がオノに共鳴するようになったことで、ある疑問が湧いてくるかもしれない。アーティストとしての顔と、ポップカルチャーの象徴としての顔、どちらがより重要だったのか、と。しかし、時を経て明らかになったのは、それは常に一体だったということなのだ。
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