横浜市長選で争点に そもそもIRとは? 横浜市の動きと国のスケジュール【図解】
●「白紙」から2019年に誘致を正式表明
横浜市では、IR推進法案が国会に提出(2013年12月)されたことを受け、2014年度からIRに関する基礎的調査を始めました。 ただ、林市長は3選を目指した2017年7月の横浜市長選で、IR誘致については明言せず「白紙」だとして当選しました。 横浜市が正式にIR誘致を表明したのは、その2年後の2019年8月22日のことです。林市長が記者会見を開き、「これまでの横浜市における調査分析の結果や国の動向などを踏まえ、IR実現に向けて本格的な検討準備を進めることにした」と述べました。 決断の背景にあるのは「横浜の将来への強い危機感」だと強調。横浜市の人口が2019年をピークに減少に転じ、生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は2065年までに73万人減少する一方、老年人口(65歳以上)は15万人増加するとの推計を紹介し、「消費や税収の減少、社会保障費の増加など経済活力の低下や厳しい財政状況が見込まれる」との見解を示しました。 その上で「横浜が都市の活力を維持し、子育て医療、福祉教育など市民の皆さまの安全安心、幸せな生活を支えていくためにはどうしたらいいのか」「IRにはインバウンドや宿泊客の増加、ナイトタイムエコノミーの充実といった横浜観光の弱点を克服し、成長戦略の中核となる横浜マイスを牽引していく力がある」と説明しました。 市長選の際に「白紙」と言って当選したことについては「一切やりませんということではない」「本当にこれ(IR)が有効かしっかり考えなきゃいけないということで『決められない』『白紙だ』と言った」と話しました。
●来春までに事業者を選定し国に整備計画
林市長の正式表明を受け、横浜市はIR誘致に向けて本格的に動き始めました。 ただ、新型コロナウイルスの世界的な流行やIR汚職事件の影響で、IR事業者選定に向けた国や自治体の作業は当初より遅れが生じています。観光庁が示した新しいスケジュールによると、誘致を目指す自治体は、今年10月から来年4月28日までにIR事業者を決定して区域整備計画を策定し、国に申請する必要があります。 横浜市では現在、事業者の選定作業が進められています。候補予定地は、横浜中華街や山下公園などの観光スポットに隣接する「山下ふ頭」。今年1月から事業者の公募をスタートし、6月には2つのグループがIRの事業計画を提出しました。 一つは、ゲンティン・シンガポール・リミテッドを代表企業とし、大林組、鹿島建設、セガサミーホールディングス、綜合警備保障、竹中工務店の計6社で構成するグループ。もう一つは、代表企業1社を含む計3社で構成するグループで、こちらは応募企業の名前は公表されていません。その理由について横浜市は、1月に示した応募要項で事業者の承諾があった場合に公表する取り決めになっていた、としています。 市によると、事業者選定をめぐる大まかなスケジュールは「夏頃までに事業者を選定し、選ばれた事業者と秋から冬にかけて計画をつくる」となっています。次回の事業者選定委員会は9月上旬に予定されていますが、9月に決まるかは今のところ未定とのことです。 いずれにせよ、国へのIR整備計画の申請期限は来年4月28日まで。それ以降、国は自治体から申請された整備計画をもとに選定作業に入り、最大で3か所を認定します。 現時点で、横浜市のほか、大阪府・市、和歌山県、長崎県が誘致に向けた準備を進めており、その後、選ばれた自治体にカジノ免許が付与され、2020年代後半にIRが開業する見通しです。