そもそもなぜ「カジノ構想」が浮上してきたのか 臨時国会で是非が焦点に?
安全保障法制の整備が来年に持ち越され、目玉となるような大きな法案審議が少ない今年の臨時国会。一部ではカジノ合法化と統合型リゾート(IR)導入を目指す法案の是非が焦点になる“IR国会”となるのでは? などという人もいるようです。 【地図】「カジノ構想」これまでに浮上した候補地は?
浮かんでは消えてきた「カジノ構想」
我が国におけるカジノ合法化論議は、石原慎太郎・東京都知事(当時)が一期目の公約として掲げた「台場カジノ構想」から数え、約15年にわたって我が国で語られてきた伝統的な政策論です。 財政の逼迫(ひっぱく)する自治体にとって、カジノ合法化は民間企業による観光投資を誘引する「呼び水」となります。 それ故、カジノ合法化論は主に地方自治体側から国に対して提案が行われてきたわけですが、それらは実際に法案審議まで至ることはありませんでした。中央省庁においては、政権が変わるごとに政策論として「浮かんでは消え」を繰り返すことから、いつしかカジノ構想は「永田町の蜃気楼」などと呼ばれるようになりました。
東京五輪の誘致成功で状況一変
しかし、昨年9月に決定した東京オリンピック誘致の成功によって、その状況が一変することとなります。2020年に開催が決定した東京オリンピックは、安倍総理自身が「アベノミスク第四の矢」とも位置づける我が国の経済振興策の柱のひとつです。 我が国では2020年までの約6年間にわたって、民間投資、公共投資を合わせて沢山の観光施設開発が行われます。森記念財団都市戦略研究所は、これらオリンピックに関連して生まれる観光投資は、2020年までの累積で約3兆5000億円に達すると推計しています。これから2020年までの我が国の経済は、良くも悪くもこれらオリンピックによって牽引されてゆくこととなるでしょう。一方、懸念されるのがオリンピック後の経済振興です。オリンピックというスポーツイベントは、世界に類をみない強力な観光資源です。しかし、その効果はパラリンピックまで含めても2か月程度のもの、地域の観光需要を一時的に増強する「カンフル剤」としての役割にしかなりません。 一方、大会期間中1000万人にも及ぶと言われる観光客数の「瞬間最大風速」に合わせて、様々な観光施設開発が行われます。当然ながら、それら投資がオリンピック開催期間中のほんの短期間で回収されるわけもなく、イベント終了後にはそれらが過剰な観光施設として地域経済にのしかかります。すべてのオリンピック開催都市が直面するオリンピック後の経済停滞。これを、いかに乗り切ってゆくかを考えるところまでが、真の意味での「オリンピック誘致施策」であるといえます。