“午後は丸ごと探究”でシブヤの学校はどう変わった? 教員も奮闘。受験目前、中3クラスを取材した
◆運動会を前に道徳の授業で理想のチームを考える
修学旅行の事前・事後学習と並行して、これから進路を考える時期を迎える生徒たちの視野を広げ、自己を深める機会も設けています。その一例が、EdTechプログラム「インスパイア・ハイ」の「セッション」を使った授業です。 セッションでは、科学者、宇宙飛行士、アーティスト、社会活動家、元兵士など世界中で活躍するさまざまな大人たちが「ガイド」となって、自分の生き方や価値観、取り組む社会課題や仕事などについて語ります。 生徒たちは、ガイドのインタビュー動画「ガイドトーク」を視聴したうえで、自分の考えや経験を表現する「アウトプット」、生徒同士で意見をシェアする「フィードバック」、その回の学びを振り返る「リフレクション」に取り組みます。セッションは1本約40分の番組になっており、50人あまりの多彩なガイドによるプログラムが用意されています。 例えば、運動会を目前に控えた時期に、「チームワークや協働について考えるきっかけにしてほしい」と古谷先生が選んだのが、「理想のチームを考える」をテーマにしたセッション。NiziUなどのダンス指導をしてきたK-POPダンストレーナーのチョ・セロムさんがガイドを務め、アウトプットでは「あなたが考える理想のチームとは?」という問いについて、生徒それぞれが自分の意見を掘り下げ、理由や自らの経験を添えて表現しました。 「セッションを通して多様な価値観や生き方、職業などに触れ、自分の中で深める機会を持つことは、生徒たちがどう生きるかのヒントを得ることにつながるはず。こうしたコンテンツを活用しながら、生徒の未来への意欲を触発したい」と古谷先生。前出のAさんも、「セッションを通して自分が知らなかった世界や考え方を知れて、将来の夢や職業を考えるうえで役立つと思う」と語ります。 また、「先生方と一緒に、生徒たちをインスパイアしていきたい」と語るのは、インスパイア・ハイを開発・提供するInspire High創業者・代表の杉浦太一さん。同社のスタッフが各校を回って活用法などをレクチャーするなど、現場の教員と一緒になって生徒の学びに伴走してきました。 「未来を生きる子どもたちに必要な力を身に付けるというのが、シブヤ未来科の狙いです。変化が激しく先行きが見えない未来を生きる子どもたちに対して大人ができるのは、何かを教えることではなく、社会、世界への扉を開くこと。インスパイア・ハイのコンテンツも、いろんな大人の姿を、子どもたちから見えるところにさりげなく置いておく、という感じがいいと思っているんです。どのタイミングで何にどのように感化されるか、スイッチが入るかは、本当に人それぞれ。どれがハマるか分からないからこそ、セッションのバリエーションを増やして出会いのチャンスを広げていきたいと考えています」(杉浦さん)