逆境をチャンスに変えたダルビッシュの進化
レンジャーズのダルビッシュ有(29)が28日、本拠地で行われたパイレーツ戦で1年9か月ぶりのマウンドを踏み、1年10か月ぶりの白星で復帰戦を飾った。しばらくは90球の球数制限があるため、81球に達した5回に降板したが、毎回の7奪三振で3安打1失点にまとめ、ストレートのマックスは158キロをマーク。女房役のウイルソンは、「素晴らしい投球だった。ストレートは158キロだったし、シンカーも145キロを超えていた」と絶賛。自軍のバクスター監督も、監督就任以来、初めて見る“生ダル”に「私が記憶にあるままのピッチング」と賛辞を惜しまなかった。 昨年3月にトミー・ジョン手術を行い、その後、プラン通りに順調にリハビリを重ねたが、ダルビッシュが常人と違うのは、このピンチをチャンスに変えたことである。 「逆にチャンスだと思った。野球選手はオフが2、3か月しかないため、本当に体を変える時間がない。長い時間をかけて、自分のやりたいことができるのは、滅多にないこと」 この間、ダルビッシュは栄養学を学び、肉体のメカニズムを学び、長期ビジョンにのっとった肉体改造に取り組んだ。筋量を増やすには、トレーニングと栄養が重要で、しかもピリオダイゼーション(期分け)と言われるトレーニングの計画性が必要だとされている。1か月に2キロ以上も体重を増やすような急激な増量は、脂肪を同時に増量させ、しなりがなくなり、筋肉が動くための効率が落ちるためだ。 1か月に1キロ、5か月で5キロを増やして、次に2か月をかけて3キロを減らして、正味の筋肉を2キロ増やすような計画性が理想とされているが、ダルビッシュは1年をかけて体重を6キロ増やした。理想の肉体改造である。 その結果、何が生まれたか。 復帰戦のダルビッシュのピッチングには、明らかに力みが消えていた。打順やピンチにギアを入れ替えしながらパワーの出力を変えるのがダルビッシュのピッチングの特徴だが、ハイパワー時にもブレが少なかった。