逆境をチャンスに変えたダルビッシュの進化
先頭打者として、いきなりセンター前ヒットを放ったパイレーツのジェイソは、試合後、「彼はよく見えた。手術の影響など見えずに普通だった。自分でしっかりとピッチングを支配していた。ストレートもちろんよかったが、故障する前よりカーブがよくなっていた。彼は以前いいカッターを多用していたが、あそこまでカーブはよくなかったのではないか」と証言した。キャッチャーのウィルソンは、ダルビッシュの親友、ペレスがウイニングショットとするシンカーの進化を口にした。 カーブ、シンカーと変化球にキレが増したのも、まぎれもなく肉体改造により“排気量”が増えたためだ。 要所、要所でバッターの目線を縦に大きく動かすカーブと、145キロ近いスピードで手元で落ちてくるシンカーは、リーグでチーム打率1位のパイレーツ打線を翻弄していた。 トミー・ジョン手術は失敗例も多く、逆に手術前の状態を取り戻すのに3年はかかるとされているが、ダルビッシュは、休んでいる間に、手術前の状態より進化させてみせたのである。 感動の復帰白星を手にしたダルビッシュは、試合後、冷静に「球速も出ていたし、いい球がいっていた。通用するとは思った。でも重要なのは、この試合だけでなくトータルで結果を残せるかどうか。自分を評価するのは、それからです」と、言葉を発した。 ダルビッシュはトミー・ジョン手術を受けるピッチャーの成功例として新しい進化モデルを全米に示すのかもしれない。