京都東山と祇園、和洋の粋出合うラグジュアリーホテル泊 美食・古美術散歩で憩う
連載《とっておきの旅》
インバウンド(訪日外国人)でにぎわう京都の街には、インターナショナルなラグジュアリーホテルブランドが数多い。2024年8月、シンガポールのバンヤン・グループが東山の絶景の地にオープンしたフラッグシップホテルと、アイルランド人オーナーが営む祇園の古美術商街にあるブティックホテルは共に日本を代表する建築家が手掛けた和洋の粋が出合う宿。一味違う京都のラグジュアリーを堪能してみよう。 「バンヤンツリー・東山 京都」「THE SHINMONZEN」、2つのラグジュアリーホテルの内外観や料理は?
■隈研吾氏による幽玄の美、至高のスパ 「バンヤンツリー・東山 京都」
近隣の清水寺や高台寺の喧騒(けんそう)とは打って変わり、深い森と竹林に囲まれた静かな高台に建つ「バンヤンツリー・東山 京都」。京都駅から車で約20分、バスを利用する場合は東大路通りにある最寄りのバス停留所「東山安井」で降りて12分ほど歩く。 坂本龍馬や中岡慎太郎など幕末の志士をまつる「京都霊山(りょうぜん)護国神社」への参道「維新の道」の坂を上がると、破風(はふ)のある切り妻屋根をヒノキの柱と4本の脚が支える立派な門が現れる。古来この霊山の地は、人のつくった街と自然の山、現世と来世を隔てる地とされてきたという。立派な門は、そんな非日常な世界への入り口にふさわしい。 「バンヤンツリー・東山 京都」のマスターアーキテクトは、世界的建築家の隈研吾氏が手掛けた。日本の伝統的な技術を取り入れながら、現代を感じさせる建築は、京都の街を見下ろす東山の景観と調和している。幾重にも重なるエントランスの庇(ひさし)や背後の竹林や空が透けて見える能舞台の羽目板など、伝統的でありながら現代にもマッチしたデザインが美しい。 京都市内のホテルで能舞台を擁するのはここだけ。京都の食材を中心にした本格的な会席が楽しめるダイニングからも眺められ、日本の伝統や美をめでるこのホテルの象徴的な存在でもある。
■畳の床のシンプルモダン、緑の庭園と街並み一望
全52室の客室は48平方メートルから74平方メートルとゆとりの広さ。畳の床と天然木の柱、ふすま、大きなヒバの浴槽など日本の伝統も取り入れながら、シンプルモダンで居心地がいい。デザインは数々の有名店舗やホテルで腕を振るった橋本夕紀夫デザインスタジオが手掛けた。 緑の庭園や竹林を眺めながらプライベート温泉に浸れる部屋、ふすまを開けると目の前に街並みが広がる部屋など、客室は6タイプある。室内に置かれた鉄瓶で入れたお茶で一服しながら、くつろぐのもいい。