なぜ若者も熱狂?フィリピン大統領選挙が“お祭り騒ぎ”になる理由
2022年5月9日、6年ぶりにフィリピン共和国の大統領選挙が行われます。この選挙はフィリピン国民が注目している一大イベントです。大人だけではなく、10代~20代の若者、さらには選挙権がない子どもまでもが“お祭り騒ぎ”といえるほど盛り上がり、選挙に積極的に参加しています。なぜそこまで若者が熱心に政治に関わるのか、フィリピンの政治に詳しい神戸市外国語大学准教授・木場紗綾さんに聞きました。
5月9日投開票 フィリピン大統領選挙
木場紗綾: フィリピン大統領選挙は6年に1度行われ、選挙権を持つのは18歳以上の国民です。投票するためには、約1年前に自分で選挙管理委員会に有権者登録をする必要があります。また、大統領選挙と同日に、副大統領、上院(24議席)の半数、下院議員(選挙区と比例とで約310議席)、地方首長・地方議会議員などの選挙も同時に実施され、選挙自体が国を挙げた一大イベントになっています。 国政選挙のキャンペーン期間は、90日間と長期にわたります。この期間は毎日のように、全国での選挙演説会など候補者たちの行動がテレビで放送されます。演説会の様子(訪問地域、発言、態度、目線、集まった聴衆の数など)がテレビ放送され、それがSNSで拡散されるのです。 今回の選挙では、今年の2月8日から選挙キャンペーンが始まり、5月9日にいよいよ投票日を迎えます。大統領には、10名が立候補していますが、これまでの世論調査でトップに入っている有力候補はフェルディナンド・マルコス・ジュニア氏(愛称はボンボン・マルコス)です。彼の父は、1965年~1986年まで20年以上大統領を務め、フィリピンの権威主義体制を確立した人物です。マルコス独裁政権を経験している人々は、歴史が繰り返すことを危惧していますが、他方で「マルコス時代は秩序があってよかった」「強いリーダーがいてよかった」という声もあります。また日本では、元プロボクサーのマニー・パッキャオ氏の立候補が有名ですが、国民からは「ボクサーのままでいてほしかった」、「政治には向いていないんじゃないか」という意見が多いようです。