なぜ若者も熱狂?フィリピン大統領選挙が“お祭り騒ぎ”になる理由
大人たちが政治をオープンに語る姿を見て育つ若者たち
木場紗綾: このように、フィリピンの人々は選挙をイベント感覚で楽しみながらも、自分ごととして捉え、少しでも自分に利益が出るように真剣に政治に向き合っています。そしてフィリピンの若者は、親や親戚、近所の大人たちが政治をオープンに語る姿を見て育っています。この点こそが、若者たちが政治への関心が高い理由だと思われます。 日本では、数年前に選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられ、2022年4月からは成人年齢も18歳に引き下げられました。日本における若者の政治意識の低さを心配する声もありますが、まずは大人たちが選挙の情報を積極的に収集し、選挙を情報収集、情報交換の機会として真剣に活用して、自分たちでも楽しみ、政治をオープンに語ることが重要なのではないでしょうか。日本とフィリピンでは選挙の制度そのものも違いますので、簡単に比べることはできませんが、こういった姿勢についてはフィリピンから多くを学べると思います。 ====== 木場紗綾(きば さや) 神戸市外国語大学国際関係学科 准教授。政治学博士。神戸大学大学院国際協力研究科修了。フィリピン大学研究員、在フィリピン日本国大使館専門調査員、在タイ日本国大使館専門調査員、衆議院議員秘書などを経て現職。専門は東南アジア政治、国際協力論。防衛大学校グローバルセキュリティセンター共同研究員。技能公募予備自衛官(英語)。近著に、Pathways for Irregular Forces in Southeast Asia: Mitigating Violence with Non-State Armed Groups (Routledge, 2022年)、『アジアの安全保障2021-2022』(朝雲新聞社2021年、共著)など。